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日録2012年2月 


29 februari 2012(水)※閏日の未明から降りしきる雪

◆午前5時前に起床.気温は+0.4度.予報通り雪あるいはみぞれが降っているらしい.夜明け前の観音台は雪が降りしきっている.降り始めの気温が高かったせいか,路面の積雪はなし.ただし,すでに路肩は積雪し始めている.道路の視界もよくないので,これからの通勤は要注意.午前7時の気温は+0.5度.雪はなお降り続いている.ただ,雪がどんどん降ってもすぐに融けてしまうので,路面ではみぞれが降ったあとのシャーベット状のように濡れている.

◆雪降る午前の┣┣" 一頭 —— 午前10時半から所内の領域会議.今日はとくに重要な審議事項はなかった.観音台は雪が絶え間なく降り続いている.それも牡丹雪ではなく,粒のような細かな雪.いまの気温は+0.2度(これが本日の最低気温).実験圃場は見渡すかぎり真っ白な雪景色が広がっている.

◆[欹耳袋]朝日新聞朝刊「耕論」で阪大の菊池誠さんの顔写真を初めて見て,立ち直れないほどの衝撃を受けている.日々のツイートと外見とは何の関係もないことはリクツではわかっていたんだけど.ワタクシだって,かつて「こめかみに青筋がいつも立っている,見るからに神経質そうな,銀縁メガネの痩せ男」だと思っていたと初対面の研究者に言われたことがある.その上でとどめの一言:「実物は森のクマさんみたい〜」.この一言を発した松原洋子教授をワタクシはけっして忘れることができない.日々の言動やツイートは“表現型”とは何の関係もないのだよ.

◆雪中行軍 —— 昼休みは傘をさして池の台まで徘徊する.降りしきる雪はいまがクライマックスか.見回すと,平均で5センチ,畜草研の周囲は7〜8センチの積雪だった.しかし,午後1時前には雪からみぞれに変わり,べしゃべしゃのシャーベットに.午後1時の気温は+0.5度.ときどき小雨が降ったりやんだり.日中の気温はほぼ零度台の冷え込みだった.蜻蛉稲荷の参道は斑雪,ところどころ黒ずんだ地肌とのモザイクが鮮やかだ.

◆曇り空の午後の┣┣" 撃ち —— まずは,次年度の大学出講のための兼業届を提出完了.引き続き,常盤台と本郷の成績評価にとりかかる.常盤台の方は追加分なので,大した作業量ではない.一法,本郷のは五十名あまりの受講生がいてかなりたいへん.夕方5時過ぎにやっと UT-mate への成績入力と確定をすませた.これでやっと撤収できる.

◆明日からは三月.今日の雪空から一転して,春の陽気が到来するらしい.ということは,いよいよ本格的に「ふんが〜」のシーズンがやってくるのか.

◆本日の総歩数=12319歩[うち「しっかり歩数」7341歩/67分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=94.1kg(−0.5kg)/29.2%(−0.1%)


28 februari 2012(火)※ただ一人ひっそりと森に籠る

◆午前4時半起床.ここ数日,冷え込まない朝が続いていたが,今朝は久しぶりに氷点下2.0度まで下がっている.灰色の雲が広がる切れ目から紅の朝焼けがのぞく.明け方の雲はその後しだいに消えて,観音台は青空が広がってきた.今朝の最低気温は氷点下2.1度まで下がり,結氷と霜柱が農林団地のそこかしこに.空の表情は春めいていても,地表近くは冬のままだ.今日は終日つくばに実在する.

◆午前の┣┣" 撃ち —— 月末が迫ってきて,居室の締切┣┣" がもぞもぞと蠢き始めた.しかし,月間┣┣" 撃ちリストを確認したら,もっと大物が潜んでいて震え上がる.今月が例年より一日長いからとサボってはいけない./Bach の Cantata BMW162「ああ、婚礼に赴く今、われは見る」がBGMで流れている.ふと〈もののけ姫〉を連想して,CDジャケットで歌い手を確認したらカウンターテナーが米良美一だった./J-Stage 3 への移行旧ピッチ.新年度に合わせてスタートするとのことで,学会担当者はこの一ヶ月じたばたすることになる.

◆[欹耳袋]さっき「異議催告通知書」なる強面の封書が届いてビビりまくったが,よく読んだら『思想地図β』を出している「合同会社コンテクチュアズ」がこのたび「株式会社ゲンロン」へ華麗なる転身を遂げるという通知だった.まったく異議なしですので,がんばってください.Cf:「合同会社コンテクチュアズから株式会社ゲンロンへ

◆[蒐書日誌]カキの眼点がとらえたニューヨークの自然破壊 —— マーク・カーランスキー[山本光伸訳]『牡蠣と紐育』(2011年12月10日刊行,扶桑社,東京,303 pp., ISBN:978-4-594-06504-1 → 目次版元ページ).地球上の豊かな自然と生物相はいまや人跡まれな地の果てまで行かないと体験できない.ところが,17世紀にオランダ人が大西洋を横断して初めて到達したアメリカ東海岸のニューヨーク(紐育)一帯は,彼らが驚くほど豊穣な自然に恵まれ,先住民レナペが定着した地域だった.現在ではいくつもの摩天楼が空に刺さるマンハッタン島は,ほんの二百年前までは森と湿地が広がる野趣あふれる島だったことは,たとえ本書で当時の古地図を見せられたとしても,もはや想像すらできない.

本書は,かつてのニューヨーク一帯を記録した昔の旅行記や寄稿文を手がかりにして,この地域の自然と環境がともなってどのように変質していったかをたどっている.書名にもなっている「牡蠣」はこの地域がもともともっていた自然の豊かさの象徴にほかならない.しかし,そこに描かれているのは自然環境と人間社会との錯綜した関わり合いである.先住民との融和と排除そして渡来した西洋人どうしの対立など,ニューヨークを舞台として繰り広げられた世界史的できごとも本書の重要なテーマである.

第一部「エデンのカキ」の舞台は古き良き時代のニューヨークの回想である.たとえ貧乏人であっても,近くの海に行きさえすればいつでも好きなだけおいしい牡蠣が食べられるニューヨーク.かつては1フィートもの巨大な牡蠣がいたらしい.しかし,第二部「ソドムの都市」に入ると雰囲気は一変する.アメリカ先住民を強制的に排除してつくられた町とそこに住む利己的な新住民(ニューヨーカー)たちは周囲の海を急速に汚染していく.19世紀後半まではマンハッタンのいたるところで牡蠣料理店が繁盛したという.それにしてもおそろしいほど大量の牡蠣をこの地域の人々は消費し続けていたらしい.先住民のレナペ族も新参者のニューヨーカーたちもこの点では何のちがいもなかった.そして,ニューヨーク一帯の牡蠣が枯渇するとともに,遠方から牡蠣を運びこまれるようになったという.

現在,マンハッタン中心部のグランドセントラル駅舎のなかにある人気店〈Grand Central Oyster Bar〉もそのルーツをたどれば,かつては本書に登場する一般庶民を相手にした安い牡蠣料理屋にさかのぼれる.しかし,それほど豊富に産した牡蠣が急速な水質汚染によりニューヨーク沿岸地域から姿を消すまでにはあまり時間がかからなかった.本書は牡蠣の視点からニューヨーク一帯の自然史と社会史を見据えた歴史書である.それと同時に,生物としての牡蠣の分類・分布・生態についての解説があり,都市における環境政策が失敗したケーススタディーのひとつとしても読むことができる.

なお,本書には,昔の料理本に載っていた牡蠣料理のレシピがいたるところに挿入されていて興味を惹く.「カキの貝殻焼き」(p. 89)とか「カキフライ」(p. 186)はやや月並みかもしれない.当時の保存食だったという「カキの漬けもの」(p. 90)はたとえうまくてもきっと食べ飽きるにちがいない.しかし,「オイスター・パイ」(p. 88)や「カキの肉詰め」(p. 265)なら食体験してみたいかも.しかし,大きさが1フィートもあって「赤ん坊を食べるような」(p. 99)と英作家サッカレーが形容したような巨大な牡蠣はちょっとなあ…….

◆午後の┣┣" 撃ち —— 青空からしだいに雲が広がってきた昼休みの歩き読み.べぇと鳴くヤギさんの顔を見て一回りしてきた.今月末から来月はじめが〆切りの┣┣" 数頭をあらかじめしとめておきたい.年度末の激しい┣┣" 攻防戦は毎年イノチ懸けになる.BGM はもちろん誰もが涙する〈レニングラード〉の第一楽章.スヴェトラーノフでもムラヴィンスキーでもいい.

◆今日の最高気温は+5.7度どまりだったから春はまた遠のいてしまった.しかも,天気予報では,真夜中から雪が降り始め,明日は夕方まで降り続くらしい.積雪が予想されるので,観音台への「足」の確保をどうしようか.

◆本日の総歩数=11417歩[うち「しっかり歩数」7345歩/62分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=94.6kg(−0.5kg)/29.3%(+0.2%)


27 februari 2012(月)※年に一度のケーキでお祝いを

◆午前4時半起床.気温は+1.1度.昨日ほどではないが,薄雲がところどころ広がっている.今朝はやや冷え込んで最低気温は氷点下1.7度だった.午前中はこまごまとあちこち飛び回る.その後は都内へ出撃だ.

◆John Tukey から Edgar Anderson へ —— 筋のいい脈を掘り進むと自然に別の脈に遭遇するものだ.John Tukey を掘っていたら Edgar Anderson と再開した.Rのテストデータとしていたるところで頻繁に引用されている「iris」データの出典はほかならない Edgar Anderson だ:Edgar Anderson (1935) The irises of the Gaspe Peninsula. Bulletin of the American Iris Society, 59: 2–5.出自から言えば,実験分類学を実践する植物分類学者が Edgar Anderson の表看板だったが,後年には生物統計学の理論に関するアウトプットが多くなっていく.ずいぶん前に読んだ:Joel B. Hagen (2003) The statistical frame of mind in systematic biology from Quantitative Zoology to Biometry. Journal of the History of Biology, 36: 353-384 を読み返す.

1930年代に Ronald A. Fisher が「判別分析(discriminant analysis)」の方法論を提唱した論文によって Edgar Anderson の Iris データは一躍有名になった:R. A. Fisher (1936) The use of multiple measurements in taxonomic problems. Annals of Eugenics, 7: 179–188.Fisher は線形判別関数を考案することにより,四変量の形態データに基づく“数値的”な種間判別の技法を開発した.しかし,それは必ずしもデータの“視覚化”という点からいえば満足できるものではない.

Edgar Anderson は John W. Tukey にも深い影響を及ぼしたことが知られている.1959年に Tukey のもとにいた Edgar Anderson は Iris データを用いて多変量データの視覚化の新しい方法を模索していた.このころ Edgar Anderson が開発した「イデオグラフ(ideograph)」という視覚化法は Tukey にとっては受け入れがたかったが,データの視覚化の重要性を Tukey に認識させた貢献は大きかった.Tukey の主著『Exploratory Data Analysis』(1977年刊行,Addison-Wesley[Addison-Wesley Series in Behavioral Science: Quantitative Methods], Reading, xvi+688 pp., ISBN:0-201-07616-0 [hbk])が Edgar Anderson に捧げられているのはそういう背景があった.統計グラフィクスの観点からみてたいへん興味深いつながりである.

Edgar Anderson の伝記情報いろいろ:

  • G. Ledyard Stebbins (1978) Edgar Anderson 1897-1969: A biographical Memoir → pdf
  • Kim Kleinman (1999) His Own Synthesis: Corn, Edgar Anderson, and Evolutionary Theory in the 1940s. Journal of the History of Biology, 32 (2): 293 - 320.
  • Kim Kleinman (2002) How graphical innovations assisted Edgar Anderson's discoveries in evolutionary biology. Chance, 15(3): 17 - 21

—— きりがなく鉱脈掘削が続きそうな気配が濃厚になってきた.

◆都内とのピストン往復をさくっとすませてつくば帰還.本郷台地は北風がとても冷たい一日だった.夜は〈風の森〉一升瓶がすっからかんになった.谷中〈マミーズ〉のアップルパイも食べたし.さて,次はどーするかな.とはいえ,今夜はもう食べられないな.

◆またひとつ歳を喰ったから腹がふくれるわけではない.齢五十を過ぎればひとつふたつ増えよう減ろうが(減らないか……)“誤差範囲”ということで,とくに嬉しいこともさりとて悲しいこともありませんなあ.着実に確実に誠実に年を重ねていくということ.

◆本日の総歩数=9057歩[うち「しっかり歩数」1426歩/14分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=95.1kg(+0.9kg)/29.1%(−0.3%)


26 februari 2012(日)※ミッション書類はエンドレス

◆午前6時過ぎにのろのろと起きだす怠惰なサンデー・モーニング.薄曇り.今朝の最低気温は+1.6度で,昨日に比べてかなり肌寒い.春先は空模様のばらつきが大きい.今日は昨日みたいにお出かけすることもなく終日引き籠る予定.

◆[蒐書日誌]着便した「系譜」本 —— Eviatar Zerubavel『Ancestors and Relatives: Genealogy, Identity, and Community』(2012年刊行,Oxford University Press, New York, xii+226 pp., ISBN:978-0-19-977395-4 → 版元ページ).「系譜」のもつ社会学的な側面を論じた本.本文はたった130ページそこそこの薄さなのに,脚註やら文献リストが90ページもあって,文字情報がとても多い.

◆[欹耳袋]〈Polyglot Paleontologist〉:古生物学関連文献の英訳が公開されている.Stephen J. Gould が Adolf Remane の比較解剖学本『Die Grundlagen des natürlichen Systems, der vergleichenden Anatomie und der Phylogenetik: Theoretische Morphologie und Systematik I』(1952年刊行,Akademische Verlagsgesellschaft Geest & Portig K.-G., Leipzig, vi+400 pp. → 目次)がいまだに英訳されていない状況を嘆いた論文をかつて読んだ記憶がある.あの頃よりも,現在の方が非英語の「壁」はむしろ高くなってきたのかな./雑誌『ユリイカ2012年3月号』(→青土社ページ).特集は〈辞書の世界〉とのこと./細将貴『右利きのヘビ仮説:追うヘビ、逃げるカタツムリの右と左の共進化』(2012年2月刊行,東海大学出版会,東京,ISBN:9784486018452).shorebirdさんの書評あり.

◆薄曇りの昼下り.気温は+7.3度.昨日よりは高いが肌寒いので予定通り引き籠っている.京都ミッションの報告書類をちくちく書き始めたら時間がどんどん削り取られてしまって,どうしようもなくはてしない(never-ending ┣┣" ).夕方,やっとミッション書類を書き終えた.昨年からずるずると引きずってきた書類書きだったが,あとは現地へ持参するだけの簡単なお仕事.しかし,それはいったいいつになることやら.

◆[欹耳袋]大学生の数学リテラシーについて(続) —— 日本数学会「「大学生数学基本調査」に基づく数学教育への提言」(2012年2月21日).「平均」に関する記述統計の設問については,測定誤差の問題が浮上しないように文字変数の問題にすればよかったのに→ cf: あらきけいすけの雑記帳「マジメな子ほどひっかかりそうな「大学生数学基本調査 調査票」の設問」(2012年2月25日).もちろん,この調査結果そのものには「比較」の視点がないので,大学生の数学的リテラシーが上がったか下がったを論じることはできない.

◆さて今宵もそろそろ〈風の森〉を開栓することにしようかな.〈蒼空〉の粕汁と〈風の森〉のおりがらみはかなりいいデュオだ.一升瓶がそろそろ空っぽになりそう.

◆[欹耳袋]〈京都学派アーカイブ〉:西田幾多郎と田辺元に関するアーカイブ.田辺の「種の論理」に関する情報が目を惹く.たとえばブラウアーの「選択系列(Wahlfolge)」に関連する本人の書き込みを見ると,「種」は内包的(「 für alle \(x\) 」)であるのに対し「個」は外延的(「 für jedes einzelne \(x\) 」)というようなマルジナリアが読み取れる.数学基礎論のバックグラウンドのもとに「種の論理」が出現するようすがうかがえる.

◆本日の総歩数=427歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=94.2kg(+0.6kg)/29.4%(+0.8%)


25 februari 2012(土)※三寒四温は呑んだくれる弁明

◆午前5時前起床.気温は+4.2度.強い北風に吹かれて雨が吹きこむ.気温は明け方よりもさらに下がり続ける.風雨が強まってきた.最低気温は午前10時過ぎの+2.7度だった.日によって寒かったり暖かかったりと,春先ならではのめまぐるしい移り変わりに翻弄される.昨日は「春」,今日は「冬」.

◆[蒐書日誌]新刊情報 —— 内澤旬子『飼い喰い:三匹の豚とわたし 』(2012年2月22日刊行,岩波書店,東京,本体価格1,900円,ISBN:978-4-00-025836-4 → 版元ページ).最初の豚の「種付け」から始まって「最後」に喰うまで.前著:内澤旬子『世界屠畜紀行』(2007年2月10日刊行,解放出版社,ISBN:9784759251333 → 書評目次)と同じ流れの本か.かなり読んでみたい気がする.

◆つくばミッションの一日 —— したくをして,雨が降り続く昼前に出発する.今日はつくばと阿見の間をピストン往復することになる.それにしても寒いなあ.お昼過ぎの〈Rungis Cafe〉にてランチなど.

◆[欹耳袋]ワルダクミの素 —— 論文をずらっと並べて端から読み進む日.ペーパーを読むたびに「ワルダクミ」のアイデアがどんどん浮かんでくるのはなぜだろうか.

  1. John W. Tukey (1962a) The future of data analysis. Annals of Mathematical Statistics, 33(1):1-67. (open access)
  2. John W. Tukey (1962b) Correction. Annals of Mathematical Statistics, 33(2):812. (open access)
  3. John W. Tukey (1972) Some graphic and semigraphic displays. Pp. 293-316 in: T. A. Bancroft (ed.) Statistical Papers in Honor of George W. Snedecor (Iowa State University Press, Ames). (open access)

ついでに,Tukey の伝記記事なども集めてみたり:

  1. F. R. Anscombe (2003) Quiet contributor: The civic career and times of John W. Tukey. Statistical Science, 18(3):287-310. (open access)
  2. Peter McCullagh (2003) John Wilder Tukey. 16 June 1915 – 26 July 2000. Biographical Memoirs of Fellows of the Royal Society, 49:537-555 (pdf)
  3. David R. Brillinger (2009) John Wilder Tukey 1915 - 2000: A biographical memoir. (pdf)

そして,肝心の Magnum Opus である:John W. Tukey『Exploratory Data Analysis』(1977年刊行,Addison-Wesley[Addison-Wesley Series in Behavioral Science: Quantitative Methods], Reading, xvi+688 pp., ISBN:0-201-07616-0 [hbk])に関連する情報など:

  1. F. J. Anscombe (1973) Graphs in statistical analysis. The American Statistician, 27(1):17-21. (pdf)
  2. R. M. Church (1979) How to look at data: A review of John W. Tukey's Exploratory Data Analysis. Journal of the Experimental Analysis of Behavior, 31(3): 433–440. (open access)

—— そもそも Tukey の『EDA』を「統計学」の文脈で読むのは実はまちがっているのではないか? 『EDA』オンライン発注完了.もちろん『EDA』はすでに研究室で公費購入しているんだけどね.初版が出版されてから35年も経つのに,古書価格がほとんど下がっていないな.John W. Tukey,おそるべし.同じ本が hardcover と paperback で出ていたら,迷わず hardcover 版を買わねばならない.

◆午後5時前,本日のつくばミッションはすべて完了.午後は雨が断続的に降り続き,気温は3〜4度台という寒さだった.終日,冷たい雨が降ったり止んだりの空模様だったので,夕餉には〈蒼空〉の酒粕(山田穂)を使った粕汁をつくろうという動議が自分会議に出され即決.大鍋に大根・人参・蒟蒻・油揚を昆布だしで煮込み,その後,塩鮭のアラを投入.最後に出汁で溶いた酒粕をたっぷり投入する.〈蒼空〉の酒粕はことのほか香りが立つので,調味はほとんど必要なかった.鮭のアラの塩味と昆布出汁のみで十分.日本酒は〈風の森〉のレアもの.〈風の森〉「純米大吟醸・きぬひかり・おりがらみ」.粕汁は二日目が食べごろになるので,明日も楽しめる.

◆本日の総歩数=4663歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=93.6kg(−0.9kg)/28.6%(−0.8%)


24 februari 2012(金)※春めく陽気に花粉も飛び交う

◆午前4時半起床.昨日よりもさらに気温が高くて+5.1度もある.明け方の薄曇りからしだいに晴れてきた観音台.今朝の最低気温は+1.6度まで下がったが,日中は春らしい暖かさになると天気予報は言う.氷点下になることはもうないのかな.今日は終日おとなしく「森」にこもって原稿を書く予定.

◆[欹耳袋]今年も「お祭り」が近づいてきた —— 〈Hennig XXXI〉Riverside, California, 23-27 June 2012.参加申込サイトが開設された. 大会後のサテライト・ミーティングとして:〈TNT Workshop: Scripting with TNT〉が予定されている(28-30 June 2012, 場所未定).三日間に及ぶミーティングなので“サテライト”というには長すぎるな.Hennig Society が提供する最節約系統樹推定ツール〈TNT〉のスクリプト(→ cf: TNT Wiki)に関するワークショップ.今年の初夏はカリフォルニァでぱぁ〜っと弾けるかぁっ.

◆暖かい午前の┣┣" 撃ち —— 旅費精算願にハンコを押すだけの簡単な┣┣" 撃ちをすませ,メーリングリストへの数十名登録・変更という単純作業も完了./東大農学部の次年度シラバス登録をすっかり忘れていた.今日が締切なので,あわてて UT-mate を起動する.連携教員のひとりが定年退職するのだが,後任人事がいったいどうなっているのかと思いきや,実はもう決まっていたことを初めて知った.そんなもんぜんぜん知らんかった……(シラバスは前任者のまま登録確定してしまったー)./某出版社から4月刊行予定のクリティカル・シンキング本(新書)で,ワタクシの『分類思考の世界』からネタを取らせてほしいとの依頼あり.どーぞどーぞ.「博士は白紙から生まれない」のあの一節かな.

◆[欹耳袋]そういえば,いまがちょうど高校や大学の入試シーズンだが,現代国語や小論文の問題としてワタクシの文章が使われる機会がだんだん増えてきたようだ.入試問題への出題(事後)許可がくるとしたら新学期に入ってからだろう.入試問題に出されたときは,受験生に出題された問題用紙が送られてくるのだが,ときには著者であるワタクシが解けないような設問もあったりする(汗).はっきり言って,あんなやっかいな文章を読まされる受験生はたまったもんじゃないだろーなあ(どの口がそういうことを言う).とある大学の現代国語にワタクシの文章が出題されたとき,「この傍線部で著者は何を言おうとしているのか」みたいな設問があって,思わず「著者は何も考えてねーよ」とつぶやいたことは誰も知らない.受験生もたいへんだろうが(災難だと思ってくれぇ),ワタクシの文章をわざわざ入試問題に出してくれた出題者にはいつも感謝している.いずれにしても受験生はガンパロー.

◆春らしい陽気に誘われる昼休み —— 午前11時の気温は+11.1度.外はよく晴れてお散歩日和ではあるのだが,本格的な「ふんが〜」の恐怖が…….しかし,せっかくのお散歩日和だったので,昼休みは農環研の周辺徘徊歩き読みを一時間あまり.とある翻訳本を読み続けているのだが,訳文にかなり問題があってせっかく心地よい天気なのに心地よく読み進められないのは残念だ.

◆[欹耳袋]データ視覚化の歴史 —— M. Friendly & D. J. Denis 2001. Milestones in the history of thematic cartography, statistical graphics, and data visualization. このチャートは実にすばらしい![pdfドキュメントもある]/random dispersal「R解析用データフォーマット例」(2012年2月13日).確かに,外部データファイルをエクセルでつくる場合,ここに書かれている「お作法」を知っているか知らないかで,その後の作業効率が大きく変わってくるにちがいない.

◆さらに暖かい午後の┣┣" 撃ち —— 2月27日(月)の東大農学部・専攻卒論発表会は9:55〜17:00.その後,専攻交流会が午後6時から./計量生物学会理事会の日程調整.3月28日または29日のいずれか./次年度の契約職員雇用に関する提出書類をすっかり失念していた.週明けが締め切りだというので,あわてて領域長に提出完了.

◆[欹耳袋]大学生の数学リテラシーについて —— 日本経済新聞「大学生4人に1人、「平均」の意味理解せず 数学力テスト:日本数学会 中央値や最頻値との誤解めだつ」(2012年2月24日).「平均」だったらこんなもんでしょ.「分散」ならもっと悲惨な結果に…….「標準偏差」「標準誤差」「信頼区間」あたりになると死亡率がさらに高まるにちがいない.今回実施された日本数学会調査の正答例(→ pdf)を見ると,ニュースになっていない推論問題がいちばん難しいかもしれない.

◆午後11時頃,北東風とともに小雨がぱらぱら降りだした.予報通り明日は雨になりそう.

◆本日の総歩数=11229歩[うち「しっかり歩数」8565歩/78分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=94.5kg(+0.8kg)/29.4%(−0.1%)


23 februari 2012(木)※雨降る昼下りはエポカルにて

◆午前4時起床.昨夜から降り始めた春雨.午前5時の気温は+4.4度と暖かい.また雨足が強まってきた.季節はもう春ですなあ.春雨がさらさらと降り続く夜明け前.午前8時,春雨にしてはちと寒すぎる観音台.本降り.気温は+4.2度と明け方よりもむしろ下がってきている.朝イチのBGMは Keith Jarrett〈The Köln Concert〉から始まる.今日の午後は所内の「職場巡視」なる点検が入るらしい.幸いなことにワタクシは午後はエポカルに逃亡しているので「なんだこの本の山は!」と怒られる心配はない.

◆Tukeyの「オレンジ本」こと『EDA』をひもとく珈琲タイム.700ページもある単行本の引用文献が,姉妹本(『Data Analysis and Regression』)と『ヨハネの黙示録』のたった二冊だけ.John Tukey,おそるべし.

◆[蒐書日誌][蒐書日誌]ジャレド・ダイアモンド[倉骨彰訳]『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎(上・下)』(2012年2月10刊行,草思社[草思社文庫],東京,ISBN:978-4-7942-1878-0 / ISBN:978-4-7942-1879-7 → 版元ページ:上巻下巻).もう出ていたのか.『銃・病原菌・鉄』はロジック(「比較法」)が一貫していて,最初から最後までブレることがない.話の筋がクリアなのはそのためだろう.ハードカバー版をそのまま文庫化したのなら,原書にある天皇の写真を含む図版がすべて省かれているにちがいない.

◆今日は春雨にしては冷たい雨が本降り.昼休みに竹園の〈ベンベラ〉にて「俺流味噌ミルクトマトカレーラーメン」の辛口を注文.肌寒い日は熱々のカレーラーメンをふうふうといただく.確かに辛かった〜.ついでに「つるんこ餃子(ハーフ)」も注文してしまったー.つくばではトマトラーメンで有名な〈ベンベラ〉.週末に行くことが多く,平日のランチタイムに入ったのは初めてだったが,正午を過ぎるとみるみるうちに客が席を埋めていった.おなじみさんも多いみたい.

◆雨降る午後はエポカルにて —— ざあざあと降り続く冷たい雨のなかを竹園〈エポカル〉へ.今日は午後1時から夕方まで,農環研主催の第2回農業環境インベントリー研究会 「昆虫インベントリーの整備と有効利用のためのシステム」がここで開催される.二階の中会議室は席が広くて内職するにはいい環境(ごめん).それにしても研究会会場の「スーツ率」がそこはかとなく高いな.蟲屋が集結するだろうから「ドレスコード」はないも同然と予想したのがハズレだったか.しかし,所外の知人たちはいつも通りの服装だったのでやや安心.山中武彦さんの「携帯フォトシステム」の話を聞きながら,乱入してきた校正┣┣" を追い払うなう.「データベース」っていうとそこはかとなく「他人事」のように感じられてしまうのはなぜだろうか.大澤剛士さんの生物多様性データベース構築に関する講演の中で「一次産業・二次産業・三次産業」と言っていたが,そのことと関係するのか.

—— エポカル研究会は定時にサクッと終わり,背徳の夜は訪れないことが確定した…….

◆[欹耳袋]〈iSpot〉: your place to share nature.こういうシステムがきちんと運用されるところが,ナチュラル・ヒストリーがかつて“国民的ブーム”になったイギリスの底力だと思う.

◆今夜は自宅でがんがん飲みまくることを自分会議に緊急動議を提出し即決〜〈蒼空〉美山錦・おりがらみが空っぽになった.

◆[欹耳袋]今日はいろいろな情報がアンテナに引っかかる —— hellog~英語史ブログ「現代日本語の方言区分」(2012年2月22日)/what_a_dudeの日記「統計学の父R.A.フィッシャー-フィッシャー哲学を学ぶエッセイ3本」(2012年2月22日)/YOMIURI ONLINE(読売新聞)「古書店街の生き字引、八木福次郎氏が死去」(2012年2月22日)./ EBook2.0Forum「電子出版余談:『普遍論争』と中野さん異聞」(2012年2月22日)※山内志朗『普遍論争:近代の源流としての』(1992年11月25日刊行,哲学書房[中世哲学への招待1],ISBN:4-88679-053-4)はジャストシステムの組版ソフトウェア〈大地〉を利用したそうな.それはさておき,次作『普遍論争2』が現実味を帯びてきたことに注目.

◆本日の総歩数=2595歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=93.7kg(+0.1kg)/29.5%(+0.1%)


22 februari 2012(水)※薄曇りの観音台は氷が融ける

◆いつもより早く午前4時に起床.気温は+1.8度と暖かい.やや雲の多い夜明け前.最低気温は+1.5度どまりだった.ほんのり朝焼けとともに朝日が雲間から見える.薄曇りの観音台は気温+4.8度の暖かさ.池や道に氷はぜんぜん見あたらず.朝イチのBGMは Wilhelm Friedemann Bach の「Flute Duetto」.演奏は Aurèle Nicolet & Christiane Nicolet.午前9時,だんだん晴れてきて,気温は+5.9度.冬から春への季節の移り変わりを実感する.

◆[欹耳袋]ある訃報 —— Dan Bickel 「[Taxacom] Vale Don Colless: 1922-2012」(2012年2月21日).Don Colless は1960年代の「系統誤謬論争」では数量表形学派の筆頭だった論客だった.最近では TaxaCom メーリングリストにたびたび投稿していたが,逝去されたとは知らなかった.彼は Diptera を専門とする昆虫学者だった.

◆[蒐書日誌]メモクリップ —— Isotype の考案者 Otto Neurath の自伝:Otto Neurath[Edited by Matthew Eve and Christopher Burke]『From Hieroglyphics to Isotype: A Visual Autobiography』(2010年9月16日刊行,Hyphen Press, London, ISBN:978-0-907259-44-2 → 版元ページ).「アイソタイプ」あるいはそれから派生した「ピクトさん」(→ 日本ピクトさん学会)は visual language としてとても興味深い./西野嘉章『浮遊的前衛』(2012年2月刊行,東京大学出版会,東京,ISBN:978-4-13-080215-4 → 版元ページ).またいつものスタイルの造本だとしたら買うしかないじゃん!

◆久しぶりに昼休みの歩き読み —— 冬場,筑波颪の吹きさらしの中を歩きまわるのは気が滅入る.しかし,昨日からの春めく陽気のなか,ひさしぶりに農環研の外回りを昼休み徘徊した.曇りときどき晴れ.気温は9.6度まで上がって徘徊には適した日和.蓄草研の飛び地はまだ残雪が日陰に残っていた.午後1時に農環研に帰還する.観音台の某研究室では John Tukey の『EDA』が引っ張りだこ!

◆[欹耳袋]Wikipedia〈List of moths of Taiwan〉:台湾産蛾類の既知種全4000種のリスト.潜在的にはもっとたくさんいるんだろうな.

◆[蒐書日誌]意外な経緯で解明されたこと —— オランダ語は江戸時代に日本に到来し,対外的な“公用語”として用いられたにもかかわらず,明治維新を越えてその命脈は絶たれた.現在にいたるまで唯一の和蘭辞典である:P. A. van de Stadt編『日蘭辞典』(1934年12月10日刊行,南洋協會,東京|1989年5月31日復刻,第一書房)は現在では電子化公開されている.しかし,その編者「P. A. van de Stadt」については経歴などの情報がなく,復刻版の巻末には「本書の著者であるファン デ スタット氏の消息もしくはご遺族をご存じの方は,下記[第一書房]までご連絡頂ければ幸いです」と記されている.ところが,意外なことにツイッターでの知人からそのファン・デ・スタットの遺族が特定できたとの情報が得られた.この『日蘭辞典』は南親会編『蘭和大辞典』(1943年6月20日刊行,創造社,東京|1986年1月25日復刻,第一書房)とともにペアー復刻された.当時の日本ではオランダ語辞典がまったく出版されていなかったので貴重な復刻だった.日本ではオランダ語辞書が入手出来なかったものだから,前世紀末にライデンに学会出張したときは,これ幸いと帰りがけに Van Daleの蘭蘭(全三巻)・英蘭・蘭英・独蘭・蘭独の計7冊の大辞典を買ってしまったものだから,Leiden Centraal 駅近くの郵便局から郵送するはめになった.ファン・デ・スタット辞書の後継となる〈新日蘭辞典編纂プロジェクト〉がスムーズに進捗してほしいと思う.

◆本日の┣┣" 撃ち —— しばらく滞っていた統計学本と今月末が締切の進化学会ニュースをいっぺんに書いてしまうという無謀な作戦を進める.図像学史における「diagrammatic turn」とJohn W. Tukey に始まる「statistical graphics」との関わり合いについて.掘り起こすと水脈がいくつか見えてくるように感じる.今日は結果的に論文を並べて端から読み進む日になった.ペーパーを読むたびに〝ワルダクミ〟のアイデアがどんどん浮かんでくるのはなぜだろうか.Tukey の『EDA』を通常の統計学の文脈で読むのはまちがっているのではないか?

◆[欹耳袋]Yomiuri Online「公務員給与削減、2年間で元に戻せぬ…前原氏」(2012年2月22日) —— 公務員・独法職員は他の収入源を各自確保するしかないかな.だって,給料が一挙に一割近く減るとなると,それぞれ身の振り方を真剣に考えざるを得なくなるでしょ.そういう話題は職場では表立っては話されないけどね.農環研は裁量労働制ではないので,兼業する場合はその時間に相当する分だけ本給を削減されて,代わりに兼業先から給与をもらうことになる.集中講義などで何日も平日を休むと,本給が半分くらいになることもある.農環研の場合,ワタクシだけ突出して多くの兼業をしているらしい.他の職員は兼業ではなく依頼出張(給料なし)で大学等への出講をするケースがほとんどとか.しかし,労働に対する報酬を実感するためには「兼業」で外に出た方がいいというのがワタクシ的な信念.そして,本給が減ることが確実になったいまは実益としての意義がさらに高まる.

◆ここのところ,夜になると早々と寝てしまうことが多くなった.季節の変わり目だからかな.天気は下り坂.明日からは雨が降るらしい.気温も高く文字通りの春雨になりそうな気配.

◆本日の総歩数=6695歩[うち「しっかり歩数」3463歩/36分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=93.6kg(−0.1kg)/29.4%(+0.1%)


21 februari 2012(火)※春の到来を告げる暖かな午後

◆午前4時半起床.日中は春めいても明け方はまだ冬が居座っている.午前6時,いま氷点下4.1度の朝焼け.今朝は一ノ矢八坂神社の時の鐘がすぐ近くに聞こえる.今朝の最低気温は氷点下5.1度.観音台はよく晴れて今日も昨日以上の陽気になるらしい.農林団地内の結氷はところどころ融けている.今朝のBGMは Gary Burton〈Like Minds〉から始まる.

◆[蒐書日誌]いただきもの —— マーカス・ウォールセン[矢野真千子訳]『バイオパンク:DIY科学者たちのDNAハック!』(2012年2月25日刊行,NHK出版,東京,287+XIII pp., 本体価格1,800円,ISBN:978-4-14-081532-8 → 版元ページ

◆午前の┣┣" 撃ち —— 今朝の┣┣" 撃ちは『系統樹曼荼羅』 の単行本化に向けての準備作業をすること.ウェブ連載の図版・解説を中核にして周縁に数多の図像を配置する予定.とりあえず,見本をつくってもらうことにした.『系統樹曼荼羅』の印刷見本を制作依頼.とりあえずブツとしての「本」がないことにはイメージがふくらまないし.こういうときに本造りに慣れた人が近くにいるとたいへんありがたい.早いうちに都内で打ち合わせる予定.日程調整をした上で,3月7日(水)13:00に目黒の〈カトマンズ・ガングリ〉にて顔合わせすることになった.

◆[欹耳袋]日経サイエンス最新号(2012年4月号).特集は「小澤の不等式」.ブックレビューを寄稿した:三中信宏「博物学者列伝:偏愛と狂気と冒険への渇望」(p. 108).書評本は:リチャード・コニフ[長野敬・赤松眞紀訳]『新種発見に挑んだ冒険者たち:地球生命の驚異に魅せられた博物学の時代』(2012年2月7日刊行,青土社,東京,479+55 pp., 本体価格3,600 円,ISBN:978-4-7917-6636-9 → 目次版元ページ).

◆午後の┣┣" 撃ち —— 2月24日(金)が締切の『進化学事典』の巻末「進化学年表」の増補版を関係者にメール送信した.これで事典関係の執筆はすべて終了.┣┣" 放牧場に大きな空きニッチが生じている.

◆[蒐書日誌]進化学事典の「進化史年表」をつくっていて,参照できるような「年表」の形式にまとめられているソースがあまりないことに気がついた.「進化史本」はよりどりみどりでも,「進化史年表」は品薄ということ.オンラインであれば,たとえば現・進化学会長がコッソリ?つくっている:倉谷滋「形態学歴史年表」はたいへん参考になる(その“偏愛”ぶりが実にすばらしい!).自然史学でいえば:西村三郎『文明のなかの博物学:西欧と日本(上・下)』(1999年8月31日刊行,紀伊國屋書店,ISBN:4-314-00850-4 / ISBN:4-314-00851-2→書評)の下巻巻末にある「東西博物学小年表」.東洋と西洋が対比させてあるので便利.詳しさでいえば:上野益三『日本博物学史』(1973年11月10日刊行,平凡社,東京,,xiv+680+73 pp. → 情報目次)の本体である全460ページに及ぶ「日本博物学史年表」が圧巻だが,日本のことだけしか書かれていないのでちょっと不便.ついでに挙げるとしたら Robert J. O'Hara の「Today in the Historical Sciences」というカレンダー.進化学・体系学を含む歴史年表をカレンダー形式でまとめてある.

なお,東西の「進化学者評伝」をまとめるにあたって参考にした本は下記の通り:

  • ピーター・J・ボウラー『進化思想の歴史(上・下)』(1987年8月20日刊行,朝日選書335/336,ISBN:4-02-259435-7 / ISBN:4-02-259436-5)
  • Ilse Jahn and Michael Schmitt (eds.)『Darwin & Co.: Eine Geschichte der Biologie in Portraits (I / II)』(2001年刊行,Verlag C. H. Beck,ISBN:3406446388 [Band I] / ISBN:3406446396 [Band II] / ISBN:3406446426 [set] → 目次:Band I / Band II
  • 八杉龍一『生命論と進化思想』(1984年8月10日刊行,岩波書店[科学ライブラリー],ISBN:4-00-005561-5)
  • 磯野直秀(編)『近代日本生物学者小伝』(1988年刊行,平河出版社,東京, ISBN:4892031402)

◆近未来┣┣" 撃ち予定確認 —— 東大の来年度シラバスをチェック.初めて全体をちゃんと見た気がする.ワタクシの「生物統計学」は次年度からは本郷ではなく駒場で開講されます.二食前の古びた理学部旧一号館に来ることはもうないんだろうなあ./今年度をもって定年退職する領域長の最終セミナーと送別会は3月13日(火)に決まった./計量生物学会の奨励賞選考は4月9日(月)が締切日.

◆[蒐書日誌]近刊情報二件 —— アビ・ヴァールブルク[田中純・加藤哲弘・伊藤博明訳]『ムネモシュネ・アトラス』(2012年3月下旬刊行予定,ありな書房[ヴァールブルク著作集・別巻],東京).得た情報によると「B5版」で「768頁(二種類の解題と50頁に及ぶ索引付き)」そして「予価24000円」とのこと.ほぼ同時に田中純さんからメールが届き,本書の書評を寄稿することになりそう.もうひとつ出版関連企画があるとのことでそちらにも呼ばれた.両方ともOKです./アドルフ・ロース[加藤淳訳|鈴木了二・中谷礼仁監修]『虚空へ向けて』(2012年3月中旬刊行予定,編集出版組織体アセテート[アドルフ・ロース著作集1],東京 → 版元ページ).

◆午後になって外気温が上がり最高気温は13.5度に達した.西日が射し込む居室は空調を切っているのに23.0度.春ですなあ.花粉ですなあ.やや,ふが〜.例年よりはマシとはいえ,イヤな季節の到来だ.ふんが〜.ほんの瞬間のことではあるが.漣のような雲が浮かぶやわらかな夕焼けはもう冬のものではない.

◆本日の総歩数=1593歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.計測値(前回比)=93.7kg(+0.2kg)/29.3%(−0.3%)


20 februari 2012(月)※朝焼けに糸のような三日月が

◆午前4時半すぎに起床.昨日ほどではないが今朝もきりきりと冷え込んでいる.午前5時は氷点下5.6度.午前6時には同6.2度.時の鐘が響きわたり,紅ににじむ朝焼けの東の空を糸のように細い三日月が引っ掻いている.早朝の観音台はきりりと晴れて氷点下.水たまりはかちかちに凍りつき,長い霜柱が地面から持ち上がっている.今朝は零下6.7度まで冷え込んだが,日中は昨日よりも暖かくなるらしい.朝イチのBGMはショスタコーヴィチの交響曲15番.現世をおさらばして涅槃から響く旋律.

◆大┣┣" 撃ちの朝が始まる —— 最近は蛍光がギラつかないラインマーカーが売られているのでとても目にやさしい:Zebra「Mildliner」 .では,マイルドライナーを片手に索引項目ピックアップの続きをしよう.午前9時過ぎ,担当章の校正刷チェックと索引項目ピックアップ完了.これから清書して,すべてのゲラを(できれば)今日中に返送したい.極小フォントの脚注ゲラ校正で目がつぶれそう.とりわけ,引用文献のアクサンとウムラウトのチェックは拷問のごとし.

◆[蒐書日誌]有朋堂吾妻店にてゲット —— アレクサンダー・フォン・フンボルト[木村直司訳]『自然の諸相:熱帯自然の絵画的記述』(2012年2月10日刊行,筑摩書房[ちくま学芸文庫],東京,349 pp., 本体価格1,300円,ISBN:978-4-480-09436-0 → 版元ページ).まさか『Ansichten der Natur』の翻訳が文庫で出るとはまったく予想していなかった.筑摩書房,エライっ! 本書の前半でとりあげられている中南米探検については,元の旅行記:アレクサンダー・フォン・フンボルト[大野英二郎・荒木善太訳]『新大陸赤道地方紀行(上・中・下)』(2001年12月20日/ 2002年12月19日/ 2003年9月26日刊行,岩波書店[17・18世紀大旅行記叢書【第II期】第7〜9巻],東京,ISBN:4-00-008849-1 / ISBN:4-00-008850-5 / ISBN:4-00-008851-3)がすでに翻訳されている.ついでに,アレクサンダー・フォン・フンボルト『Kosmos』が日本語で読めるようになるととてもうれしいんだけどなあ(ぜんぜん「ついでに」じゃないけど).

もう一冊は:アラン・ソーカル,ジャン・ブリクモン[田崎晴明・大野克嗣・堀茂樹訳]『「知」の欺瞞:ポストモダン思想における科学の濫用』(2012年2月16日刊行,岩波書店[岩波現代文庫・学術261],東京,xxx+314+106 pp., 本体価格1,480円,ISBN:978-4-00-600261-9 → 版元ページ).2000年に出版された同じ岩波書店から出版されたハードカバー版の文庫化.

◆昼休みは風もなくぽかぽかと日射しが暖かい.春の到来を実感する.今年は花粉でふがふがすることがまだない.よしよし.

◆大┣┣" 撃ちの午後の顛末 —— 午後1時,担当章のチェック項目と索引項目の清書が終わった.引き続き,他の章のコメントを清書する.本文よりも脚注の方がはるかにたいへん.アッチェント・グラーヴェ,ウムラウト,アクサン・シルコンフレクスが跳梁跋扈する.それでも,午後2時にはすべてのゲラのチェックとコメントの清書完了.すかさず黒猫さんに預けてこの件はやっと完了.

—— 以上をもって,中尾央・三中信宏(編著)『文化系統学への招待:文化の進化パターンを探る』(2012年5月刊行予定,勁草書房,東京 → 目次)のゲラ読み┣┣" は征伐された.またちかいうちに甦って回遊してくるにちがいないが,とりあえずはこれにて一件落着.

◆夕暮れの┣┣" 撃ちもう一件 —— 今日が締切の第26回国際計量生物学会議〈IBC 2012 Kobe〉の講演申込をすませた.8月末は神戸で連日の背徳〜(ちゃう).気がつけばもう夕焼けタイム.今日は日中の最高気温が10.2度まで上がり,春の到来を思わせる陽気だった.啓蟄まであと半月.今日の┣┣" 撃ちはめずらしく大漁だったので,そろそろ撤収してもいいかな.

◆夜遅く,来年の分類学会連合シンポジウムの素案を事務局にメール送信した.ワルイ興行を企画するのはとっても楽しいな.とりあえず,連合の幹事会で内容について議論してもらうことになるだろう.

◆みんなが「競技場」の中で競り合っているのを遠目に見ながら,ひとり「森」の中を歩きまわっているような日々の生活がある.

◆本日の総歩数=3110歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.計測値(前回比)=93.5kg(+0.1kg)/29.6%(+0.4%)


19 februari 2012(日)※今季最低気温更新,日中陽気

◆午前5時過ぎに起床.零下7.8度の厳しい冷え込み.二度寝して午前6時に起きたらさらに下がっていて零下8.5度.冬眠ヤマネみたいにごろごろしていた.けっきょく今朝の最低気温は「氷点下8.8度」で,めでたく今季最低気温の記録更新とあいなった.空は快晴.東の空の朝日がまぶしい.今日は締切フラッグが全然はためかない日曜日.実にめずらしい.

◆[蒐書日誌]タイトル買いしそう —— Livia Wanntorp and Louis P. Ronse De Craene (eds.)『Flowers on the Tree of Life』(2011年9月刊行,Cambridge University Press[Systematics Association Special Volume Series], Cambridge, ISBN:9780521765992 → 版元ページ).

◆暖かな昼下りの周辺徘徊 —— 正午になっても気温はまだ低くて5.2度止まり.しかし日射しが暖かいので冬眠状態から抜け出てちょいと周辺徘徊してこようかな.午後1時の気温は+7.0度.北風が吹きつけないので日射しが暖かく体感気温はかなり高い.筑波大方面に向かってさらなる徘徊を続けることを自分会議で決定.昼下りの徘徊は松見公園往復.松見池のまわりは家族連れがそこかしこに.春の気配がゆらゆら漂う松見池を見ると兇悪なる巨大鯉軍団が撒かれた餌を猛烈に食いまくっていた.

この松見池では「巨大鯉軍団」が生態系の頂点に君臨している.その驚異的な食欲と兇暴な集団行動は,群がる水鳥たちを蹴散らし,幼児たちを恐怖に陥れ,ときに YouTube にアップされることもある.岸辺の斜面にずらりとならんで口を大きく開けるようすは圧巻.上から見下ろすと,その個体密度はものすごい.こんなに大きな鯉たちがこんなにたくさん生息し続けられるのも,たえず「餌」をもらい続けているからだろう.そのせいか,餌を求めて狭い水路にまで入り込んでくるバイタリティー(というか食いしん坊ぶり)はあきれるほど.もうぎゅうぎゅう詰め.

—— 有朋堂経由で帰宅したら,エレベーターが緊急停止していて何事かと思ったら,茨城が震源で大きめの地震があったのね.外を歩いているとぜんぜん気づかなかった.

◆[蒐書日誌]松見公園横の学園都市古書センターの店頭平台にて —— Jakob von Uexküll『Theoretische Biologie』(1928年刊行/1973年復刻,Suhrkamp Verlag[Suhrkamp Taschenbuch Wissenschaft: 20], Frankfurt am Main, xxiv+378 pp.).たった「100円」で買ってしまってすみません〜.改築前はこの天久保ショッピングセンターには古書店がいくつもあったのだが,いまではたった一軒になってしまった.

◆ゆるゆるサンデーもはや夕暮れタイムを迎えた.日中の最高気温は+7.4度までしか上がらなかったが,「雨水」にふさわしく日だまりは心地良く暖かかった.蒐書徘徊ひとまわりでとてもいい収穫があった.善哉善哉.

◆[欹耳袋]Togetter -「本の帯とカバーをめぐる話」.鎌倉にある出版社〈港の人〉の宣言「帯を捨てよ、書物の姿とは何か。」(2012年1月25日)が話題になっている.しかし,本“本体”の「延長表現型」としてオビやカバージャケットを考えるならばワタクシには異論がある.たとえば,講談社現代新書は基本装丁が画一的なので(カバージャケットも色の差のみ),むしろオビで勝負しているところがある.現代新書二冊とNHKブックス一冊を出した経験ではオビの図柄と文章にはかなり手間がかかっている.著者として制作に参加したので思い入れもある.以前,うちの職場の図書室に自分の新刊本を献本したとき,目の前でオビとカバージャケットを当然のごとく剥ぎ取られたときは,延髄反射で「ちゃぶ台返し」しそうになった.ライブラリアンとしてはデフォルトの対応だったのかもしれないが.幸いなことに,現代新書の二冊『系統樹思考の世界』と『分類思考の世界』はカバージャケットの「ウラ側」にも本文とは独立した図版と説明文が印刷されているので,カバーだけ剥ぎとって処分することはそもそもできないようにしてある.新書とか選書みたいに本そのものの「基本フォーマット」(造本や装丁)が既定の場合,オビやカバージャケットで「差異化」をひねりだすしかないというどうしようもない理由もあるのだけれど.

◆今週は都内にすら出撃しないので,ひたすら観音台に張り付いて┣┣" 撃ちに精を出すことにしよう.

◆本日の総歩数=5407歩[うち「しっかり歩数」1905歩/18分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=93.4kg(−0.9kg)/29.2%(+0.1%)


18 februari 2012(土)※富士山は雪化粧,京都は吹雪

◆午前4時半起床.昨夜からの雪雲はすでに消え去ったようで,久しぶりに朝からすっきり晴れている.その代わり未明からきりきり冷却して,午前6時の気温は氷点下2.6度だった.最低気温はさらに下がって氷点下3.3度になった.ここ何日か続いた追い込まれピンチ状態からやっと脱して,今日は京都ミッションへ向かう.ほんとうだったら東京農大(厚木)昆研の卒論発表会と追いコンに参加する予定だったのだが,京都ミッション最優先が昨年末からずっと続いている.朝から久しぶりに青空が広がっているが,乾いた北風が吹きつけて体感的にはものすごく寒い.これから雪降る京都に向かうかと思うと即座にドタキャンしたくなる.

◆新年度の┣┣" 撃ち予定 —— 慶應(日吉)での出前高座と農大(桜丘)の新学期始めが正面バッティングする4月13日(金).桜丘には「ごめんなさい」と言うしかないなあ……./次年度の兼業申請(すべて大学の非常勤出講)はまとめて提出しないといけない./今月の┣┣" 撃ちカレンダーを見るとやや憂鬱になる…….

◆[蒐書日誌]「痕跡本」の愉しみと戒め —— 昨日,締切┣┣" 完全討伐後のTX車中読書本は:古沢和宏『痕跡本のすすめ』(2012年2月17日刊行,太田出版,東京,160 pp., 本体価格1,300円,ISBN:978-4-7783-1297-8 → 版元ページ古書五つ葉文庫).著者の言う「痕跡本」とは「古本の中に,前の持ち主の「痕跡」が残された本」(p. iii)のことである.“トークン”である古書は自分が手にする前にさまざまな前所有者(個人または図書館や大学)を経ている.

ワタクシ自身は,古書を入手したときには,できるだけ“トークン”であるその本の履歴を跡づけるようにしている.その中には確かに「痕跡」と呼べる書き込みがあるものもある.あるいは,著者のサイン入り献呈本も何冊か手元にある.本書の著者は長年にわたって蒐集したさまざまな「痕跡本」をカラー写真で紹介しつつ,探偵並みの推理でその「痕跡」が残された理由と背景を追求する.痕跡本の証拠写真と文章の混ざり具合が絶妙で,最初から最後まで楽しめる本だった.「痕跡本」とあえて命名しなければ,単なる「キズ本」として誰もが振り向かなかっただろう.その点ではかつての「トマソン」に匹敵するネーミングの勝利とも言えるだろう.そういえば本書に挙げられている痕跡本のいくつかは「原爆トマソン」に相当する気がする.

◆北風が身を切る京都日帰りミッション —— のろのろと午前11時過ぎになって,やっとTX研究学園駅から京都ミッションへ出撃する.こんなに晴れていても北風があまりに冷たすぎて痛いほど.乾いて静電気は飛びまくりだし.正午過ぎに東京駅で新幹線に乗り換える.都内も北風が冷たいな.今日のランチは背徳の「まいせん・カツサンド」のトリプル.頂上から麓まで真っ白に冠雪した富士山がよく見える(車内アナウンスされたほど).東海地方はよく晴れているが,車内アナウンスによると,米原付近の降雪のためダイヤが遅延するとのこと.確かに米原あたりは雪が降り続いていたが,京都駅にはほんの五分ほどの遅延で到着した.午後3時半.ところどころ雪が積もっている.奈良線に乗り換えて黄檗へ.宇治病院にて担当医師から説明を受ける.午後5時,本日の京都ミッションを完了した.外に出たら吹雪のような雪が降ってきた.タクシーで洛南を移動する.午後6時すぎ,すでに夕闇に包まれた京都駅から帰りの新幹線に乗った.

◆新幹線車内の┣┣" 撃ち進捗 —— 中尾央・三中信宏(編著)『文化系統学への招待:文化の進化パターンを探る』(2012年5月刊行予定,勁草書房,東京 → 目次)の全章のゲラをチェック完了.これから担当章の索引項目(人名・事項)のビックアップに入る.

◆「痕跡本」の感想文(続) —— 個人的にとても印象に残っている痕跡本は,六年ほど前に入手したプッチーニの歌劇〈トゥーランドット〉の総譜:Giacomo Puccini『Turandot : dramma lirico in tre atti e cinque quadri』(1958年刊行,Ricordi)だ.その年の新宿区民オペラでの上演のために購入したスコアだった(新刊は品切れで手に入らなかった).ベルリンの古書店〈Umbras Kuriositätenkabinett〉から取り寄せたのだが,カタログの説明には「Starke Gebrauchsspuren. Zahlreiche Anstreichungen」と記されていた.ブツを手にしてみたら確かにハードカバー造本がところどころ崩壊している.また書き込みの量が尋常ではない.それもそのはず,この“トークン”本はとある指揮者が実際の〈トゥーランドット〉の上演に用いた総譜だった.実際に開いてみると,タクトの振り方からはじまって,独唱・合唱・オーケストラそれぞれの演奏上の注意点や変更点から譜面の印刷ミスの訂正にいたるまで詳細なドイツ語の書き込みが記されていた.まさに定義からしてまごうことなき「痕跡本」なのだが,ここまで前所有者の痕跡が濃密に残されていると,“痕跡”などではなく“実物”そのものではないかとさえ感じた.

残念なことに,この総譜の前所有者がいったい誰だったのかは未だに判明していない.当時はいろいろネット検索もしてみたのだが手がかりはまったくつかめなかった.しかし,今回『痕跡本のすすめ』を読了して,そのあとがきに次の一節を見つけた:

さて,ここでひとつ,聞いてほしいことがあります.それは僕が痕跡本を楽しむ上で守っていることの話.それは「痕跡本の持ち主を捜さない」ということです.(p. 157)

痕跡本は,痕跡のみで楽しむ.それは,痕跡本を読む上でのモラルであると同時に.痕跡本の物語を守ることでもあるのです.(p. 158)

そーか,そういうことだったのかと六年目にして膝を打ったしだい.どうもありがとうございました.

◆午後9時に東京着.都内は晴れていたが寒すぎる.午後10時過ぎにつくば帰還.気温は早くも氷点下4.4度まで下がってきた.今夜はもう寝るしかない.

◆本日の総歩数=4559歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=94.3kg(0.0kg)/29.1%(−0.1%)


17 februari 2012(金)※締切┣┣" 撃ちと雨の神楽坂

◆午前3時過ぎに起床.超早寝したので超早起きするはずがうっかり寝過ごしてしまった.あわてて闇に沈む観音台に直行する.気温は零下1.3度まで下がっているが,本道・側道ともに凍結箇所は皆無だった.駐車場のまわりを見回すと積雪は2センチほどか.すでに雪雲は通り過ぎて,うす雲の向こうにぼんやりと月が見えている.夜明け前の薄明.観音台の農林団地は見渡すかぎりの雪景色.たいして積もってはいないのだが,それでもずっと向こうまで真っ白.東山魁夷の絵を髣髴とさせるものがある.午前7時過ぎ,曇り空だが外はすっかり明るくなっている.今朝の最低気温は零下2.4度.路面凍結しているかもしれないな.あと数時間は外に出ることはできない自主的軟禁状態なので,とりあえずなにも気にすることはないが.その後,やっと朝日が観音台に降り注ぎ始めた.雪の白さが目にしみる.

◆[蒐書日誌]Banister F. Fletcher『A History of Architecture on the Comparative Method for the Student, Craftsman, and Amateur, Fifth Edition』(1905年刊行,Scribner's Sons, London → OpenLibrary)※建築様式系統樹が載っている(表紙口絵).

◆まずは大┣┣" 一頭を仕留める —— 午前10時前に,まずは連載原稿6500字を編集部にメール送信:三中信宏〈系統樹ウェブ曼荼羅〉の最終回「時空的に変遷するオブジェクトの系統樹:総括として」.いつものように月末には公開されるだろう.過去の連載記事よりも1.5倍ほど長い分量になった.連載開始から一年余り.やっとこれで次なる単行本化の企画を進められることになる.図版の増補とコンテンツの整理をして「本」になるようにしないと.

◆ふと居室の窓の外を見たら,積もった雪が融け始めている.あらあら.午前10時の気温は+1.4度と冷え込んだままだが.昼ご飯の調達に外に出たら陽光がほかほか暖かかった.正午にはこの日の最高気温+8.4度まで急速に上がった.農林団地の残雪はどんどん融けている.はかないなあ.しかし,天気予報によると,今夜はまた雪が降るのだそうな.

◆次なる大┣┣" の征伐に向かう —— 昼過ぎから次なる┣┣" 征伐へ.日本進化学会(編)『進化学事典』(2012年4月近刊,共立出版,東京,1024 pp., 本体価格18,000円,ISBN:978-4-320-05777-7 → 版元ページ)はすでに近刊予告が流されていて,もう逃げようがない.しかも印刷所への入稿締切は本日午後4時! 締切まで4時間を切ったいまもなお原稿┣┣" 軍団とのバトルはなお続いている.休憩のないインターバル・トレーニングをしているようなもの.午後3時過ぎ,進化学事典の進化学者列伝(17名)を茗荷谷へメール発信だん! 最後の4項目についてはゲラが出たときに加筆修正することになった.いずれにしても本塁突進滑り込み.

◆[欹耳袋]国際計量生物学会議〈IBC 2012 Kobe〉26-31 August 2012 の早期参加登録締切は「2月20日」→ 大会サイト

◆雨の神楽坂にて —— さて,昨日からの必死の┣┣" 撃ちを終え,これから神楽坂にて背徳の夜……ではなくて,某学会の理事会に出席してくるっ.速攻で帰宅し,TXつくば駅から16:00発の区間快速に乗った.午後5時過ぎに飯田橋着.都内は雨(雪?)が降り出しそうな天気図だ.午後5時半に始まった計量生物学会理事会は予定通り午後7時に終了.小雨に濡れる神楽坂は情緒ありまくり.東京理科大ってロケーションいいなあ.キャンパスを出ればドアツードアで飲み屋がよりどりみどり.北千住までは小雨だったが八潮では本降りの雪になった.午後8時過ぎにつくば着.しだいに雪が強まってきた.これからどんどん降りそうな気配.気温+0.8度.今日は締切滑りこみをいくつもこなしたので,夜はゆるゆるするよ.

◆本日の総歩数=4281歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝−|昼○|夜△.計測値(前回比)=未計測/未計測


16 februari 2012(木)※小雪降る茗荷谷で再カンヅメ

◆午前4時起床.ここのところ早寝の癖がついている.睡眠時間だけは十分に取っているのだが,なかなか仕事の進捗がよろしくない.今朝は冷え込みがやや強くて,いま+1度台.早春の寒暖差は予測がなかなかつかない.薄曇りの朝の観音台は寒さが染み込む.今朝の最低気温は+1.0度とまたしても氷点下に達しなくて,氷や霜とは無縁だった.午前中は居室にて原稿書き,午後は茗荷谷でカンヅメになる予定.

◆予告されている┣┣" の列挙 —— 2月17日(金),17:30~19:00.計量生物学会対面理事会,東京理科大学・神楽坂校舎3F第3演習室.華麗にスルーしてしまうところだった……./2月18日(土)は京都ミッション.農大の昆研卒論発表会と追いコンが予定されていたのだが行けそうにないな./2月23日(木)午後に職場巡視あり./来年度の兼業申請二件出すこと.南大沢と町田./進化学会ニュースの原稿を月末までに用意せよとの御下命あり.

◆ここ二三日は原稿の締切に追われていて,連日デッドラインがメールで通告されるという余裕のない生活が続いていた.今日もこれから茗荷谷の出版社の座敷牢に幽閉され,とうの昔に締切が過ぎている事典原稿を書かされるはめに.入牢に先立って,ときおり雪が舞い始めたJR大塚駅前に降り立ち,駅前商店街の〈小閣樓〉にて上海担々麺を.奥まった寒い路地に面してひっそりと立つ上海料理店.そのロケーションがいかにも上海的で,しかも薄暗い半地下に降りていく感じがかつての魔窟のようなアヤシい雰囲気を醸し出している.〈小閣樓〉の上海担々麺は,よくある激辛の四川担々麺とはぜんぜんちがっていて,白ごまベースのスープにローストされたひき肉と黒ごまペースト,そして香菜と松の実がトッピングされている.しかも極細ちぢれ麺.ぴりぴりする唐辛子の辛さよりもむしろごまの風味が食欲をそそる.入牢の前のささやかなシアワセ.

◆[欹耳袋]ブータンシボリアゲハ同時公開 —— 東京農大「食と農」の博物館1階展示室「【速報】生き物に聞く展「ブータンシボリアゲハ」近日公開!」および東京大学総合研究博物館「幻の大蝶・ブータンシボリアゲハ」(→ pdf).いずれも2012年2月17日(金)から公開開始.

◆小雪の舞う茗荷谷で入牢する —— 茗荷谷で下車.雪が舞う駅前を通り座敷牢へとぼとぼ向かう.またしてもカンヅメの昼下りか.いま入牢しているのはワタクシと三島の牢名主さんのふたり.後ほど柏の葉キャンパスから筆の遅いらしい某研究所長も連行されてくるとのこと./とりあえず書きかけの「研究者列伝」のジョフロワ・サンチレールから開始.続いてアレクサンダー・フォン・フンボルト,リチャード・オーウェンへと進む./隣の牢名主さまから,ヴァイスマン,ド・フリース,モーガンが飛んできた.がんがん書かないと! 追い打ちをかけるように,ゴルトシュミット,ライト,フィッシャーが立て続けに着弾〜./柏キャンパスから某研究所長も入牢しにきた.罪深き三名よのぉ./遺伝学者・駒井卓邸はかのヴォーリズの建築物だそうだ.リチャード・オーウェン完了.いよいよチャールズ・ダーウィンへ./明日午後四時が入稿デッドラインという最終通告.ひー(冷汗)/チャールズ・ダーウィン,書き終えた.やっぱり原稿用紙三枚になってしまったか./午後5時から,牢名主様ともうひとつの懸案である「進化史年表」にとりかかる.

—— 午後7時前,茗荷谷の座敷牢からやっと解放されて帰路へ.夕闇の都内は雪が降り続いている.かなり寒い

◆[蒐書日誌]日本進化学会(編)『進化学事典』(2012年4月近刊,共立出版,東京,1024 pp., 本体価格18,000円,ISBN:978-4-320-05777-7 → 版元ページ).※来月中旬の生態学会滋賀大会で販促ビラを配れるかなあ.買ってください〜.

◆本日の総歩数=3480歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=94.3kg(−0.5kg)/29.2%(0.0%)


15 februari 2012(水)※朝から締切に迫られ絶命寸前

◆午前5時起床.気温は+3.7度と暖かい.曇り空の切れ目から朝日が顔をのぞかせる.今日の午前中は観音台にて予算執行の締切日じたばた.午後は本郷にて教員会議の予定.昨夜の新大久保での背徳の宴は,いつものような飲み過ぎではなく,シンプルに食い過ぎだった…….しばらく「肉断ち」しないと……(´・_・`) 

◆[欹耳袋]スティファドをまたつくってみるか —— ギリシャのごはん「オレンジ風味のポーク・スティファド」(2012年2月14日)

—— あ,いやいや,肉断ちするんだったー.

◆予算残額三十万円を俊速で使いきる簡単なお仕事 —— のはずが,ぜんぜん簡単なお仕事ではなかった.本日の予定は大きく番狂わせになり,しかも新着┣┣" が二頭も漂着してもうたいへん…….とりあえず締切を過ぎた(かもしれない)原稿┣┣" 一頭を追いかけることにしよう.そうしよう.

◆[欹耳袋]ある訃報 —— TaxaCom「Edward G. Voss - 1929-2012」(2012年2月13日).ワタクシが Voss の名前を知ったのは,系統樹の図像史に関して書かれた60年前の彼の論文を通してだった:Edward G. Voss 1952. The history of keys and phylogenetic trees in systematic biology. Journal of the Scientific Laboratories, Denison University, 43: 1-25. 別刷りは故・太田邦昌さんからもらった.生年から逆算すると Voss が若干23歳のときの記事ということになるのか.分類学における検索表と系統樹の使用をたどった彼の論考は:Herman J. Lam 1936. Phylogenetic symbols, past and present (being an apology for genealogical trees). Acta Biotheoretica, 2: 153-194 に続く先駆的な位置を占めている.植物分類学者として名を成す前の,文字通り「若書き」のこの論文以外にはまったく何一つ接点のない研究者だったが,逆に言えばたったひとつの文章でつながりができる奇遇でもあった.

◆明日はまた茗荷谷カンヅメ日.諸方面の締切フラッグが激しく旗めいている.「痕跡本」とか「蟲文庫本」とか読みたいのだが,なかなかそうも言っていられない…….

◆本日の総歩数=2081歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼−|夜△.計測値(前回比)=94.8kg(+0.4kg)/29.2%(−0.3%)


14 februari 2012(火)※今月も新大久保で背徳の夜を

◆午前4時半起床.霧雨にけむる観音台は気温+5.3度.最低気温は氷点下にこそならなかったが,湿ってひんやりした朝.今は曇り空だが,西から大きな雨雲が近づいているので,午後にはまた雨になるらしい.午前中は居室にて原稿仕事.午後からは新大久保でバクハツだぁ〜

◆朝の観音台は┣┣" 撃ち乱射 —— 日経サイエンス書評原稿(2012年4月号)を編集部に送信完了:三中信宏書評「博物学者列伝:偏愛と狂気と冒険への渇望 」→リチャード・コニフ[長野敬・赤松眞紀訳]『新種発見に挑んだ冒険者たち:地球生命の驚異に魅せられた博物学の時代』(2012年2月7日刊行,青土社,東京,479+55 pp., 本体価格3,600 円,ISBN:978-4-7917-6636-9 → 目次版元ページ).折り返し,日経サイエンス編集部から速攻でレイアウト割付が返ってきた.即返信して一件落着./引き続き,時事通信社の書評原稿も編集部に送信した:マーク・カーランスキー[山本光伸訳]『牡蠣と紐育』(2011年12月10日刊行,扶桑社,東京,303 pp., ISBN:978-4-594-06504-1 → 目次版元ページ).

◆小雨の新宿百人町にてお座敷 —— ふと気がついたら,お昼ずっと前に〝早弁〟してしまっていた〜.食欲おそるべし.さぁ,これから背徳の新大久保へ出撃だ.12:25発のTX快速に乗って都内へ.つくばは曇りだったが,新大久保駅前は小雨がしとしと降っていた.百人町の某所にて午後2時から高座.今日は実験計画法を中心に線形統計モデルの話を.午後5時前に終了.夕闇迫る百人町は冷たい雨が降り続いている.某研究所の一室にて一休みしつつも,別件の原稿┣┣" を追いかけるなう.暗くなったら背徳の新大久保方面に出撃する予定だ.日経サイエンスと時事通信社からそれぞれ書評ゲラが届いていた.速攻で返信し,この件はおしまいっ.

◆破壊的威力のサムギョプサルは背徳度極大 —— 研究所の控え室にて小一時間の仕事をすませたのち,そろって新大久保駅前へ.新大久保の背徳の一夜が迫ってきた.某食品会社の研究所長は「今夜は新大久保のあの店でサムギョプサルを食いまくって背徳度を有意に上げるぞ」と息巻いていたのだが,いったいどこの魔窟へ連れ込まれるのだろーか? 外に出てみると,冷たい雨が降ったり止んだり.百人町から新大久保駅のガードをくぐって向こう側のコリアンタウンの深みへ.とある横丁を入ってすぐのところにある〈コリアンキッチン味ちゃん〉にて今宵の宴だ.

店内に通されてすぐ目につくのは,ガスコンロにかけられた焼肉プレートの絶妙な「傾斜」.この店は「極厚サムギョプサル(豚の三段バラ肉)」が名物で,それを焼くための専用プレートとのこと.下流側にアブラの流出口が開いていて,肉を焼いたときのアブラがここから滴り落ちるらしい.これを見ただけで背徳度はいやが上にも上昇する.極厚18mmのサムギョプサルをずらりと配置したボリューム感はただごとではない.しかも.アブラ排出口をわざわざキムチで「封印」し,揚げ焼きのように焦げ目をつけるという焼き方.強火でがんがん焼きあげるのはとてもワイルド.サムギョプサルが食べごろになると,こんな感じに.食べ方のスタイルはきっちり決まっているらしく.サンチュに巻いたりにんにくを添えたりキムチをトッピングしたりする.それにしても,この脂身の入り方は背徳.サムギョプサルのほかにも,超弩級・海鮮ねぎチヂミとか山盛りケジャンなどを注文したので,テーブルからお皿があふれそう.

—— 午後10時過ぎにつくば着.今夜は「飲んだくれた」というよりも「喰いまくった」という感が強かった.

◆本日の総歩数=8439歩[うち「しっかり歩数」1125歩/11分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前回比)=94.4kg(−0.5kg)/29.5%(+0.1%)


13 februari 2012(月)※締切が背後から魔王のように

◆午前4時半起床.昨夜は十時半には寝てしまったので,さくっと起きられた.丑三つ時には零下5.3度まで下がったらしいが,いまは同3.5度.きのうの午後は北風が吹き荒れて,畑地から土埃がもうもうと巻き上がったが,今日は下り坂で夜には雨や雪になるとの予報.締切という名の魔王が背後から迫ってきた.誰も振り向いてはならぬ.

◆週明けの朝の┣┣" 撃ち —— 薄曇りの観音台はまだ氷点下の冷え込み.今日は五日ぶりに農環研実在日.今週は連日「締切フラッグ」が激しく振られる.水平線を見渡せば流氷┣┣" が,地平線を見やれば登攀すべき山岳┣┣" が.朝イチのBGMは Richard Strauss の〈アルプス交響曲〉.数日間放置した居室は┣┣" の天国になっていた.方々に生えていた新┣┣" どもをなぎ倒すようにいっせいに刈り取ってやっと一息ついたところ.ちょっと一休みの珈琲充.┣┣" 撃ち三件の締切がすべて今日であることの快楽とはいったい何だろうか.

◆[蒐書日誌]井上究一郎『ガリマールの家:ある物語風のクロニクル』(1980年9月25日刊行,筑摩書房,東京,ii+162 pp. + 16 plates, ISBNなし → 版元ページ).先日,北白川のガケ書房でゲットしたもう一冊の本.フランスの出版人ガストン・ガリマールの伝記のようでもあり,同時に自伝的小説のようでもあり.函入り.フランス装風の装丁は栃折久美子.2003年にちくま文庫に入った.

◆昼休みも続く┣┣" 撃ち —— 常盤台の成績評価がごたごたしていてランチタイムに入れない.とりあえず,追加のレポートでかわす.ワタクシのミス一件あり.講義だけではなく,成績評価の作業まで含めればかなりの負担になってしまう./いきなり緊急┣┣" 出現! スクランブル発進! 遅延していたジャーナル電子化公開作業┣┣" を征伐したので,午後1時過ぎにやっとランチタイム./生態学会滋賀大会とGCOE〈心の社会性〉総括シンポジウム(竹橋)とが日程的に正面衝突している件.(でびるまんの陰謀か……[ウソ]).

◆夕刻から雨または雪の予報だったのだが,いまのところときどき薄日が射しこむ穏やかな空模様.気温も+8.5度まで上がってきた.

◆午後の┣┣" 撃ちで疲弊する —— 天気予報では夕方から雨だ雪だと言っているけど,この晴れっぷりからは予想もできない.原稿┣┣" 三頭を同時に追っかけるというアクロバティックなお仕事./東大農学部連携講座特論の成績を UT-mate に入力完了.この件はおしまい./5月に出版されるカール・ジンマー訳本へのコラム寄稿の図版を編集部に送る./某ジャーナル電子化作業の残務をこなす.

◆[欹耳袋]ダーウィン関連 —— カレントアウェアネス・ポータル「米国自然史博物館がチャールズ・ダーウィンの手稿資料プロジェクトサイトを公開 デジタル化資料等を提供するデータベースも」(2012年2月13日).これか→〈DARBASE〉.

◆西日がさんさんと降り注ぐ居室.夕暮れとともに観音台を撤収したのに,原稿┣┣" が家まで追いかけてきた.書くってばー.

◆本日の総歩数=3233歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=94.9kg(−0.1kg)/29.4%(+0.2%)


12 februari 2012(日)※日曜日なのに休むこと能わず

◆午前5時起床.関西では厳しい冷え込みはなかったが,つくばはまだ冬の真っ只中.今朝の最低気温は午前7時の氷点下4.7度だった.朝日が東の地平線から元気よく上がってくる光景は山に囲まれた京都では期待できない.今日はシズカに原稿仕事をする日と決めているのだがはたしてどうなることやら…….

◆[欹耳袋]シュプリンガー・ジャパンの和書出版の今後 —— 名大生協「シュプリンガー・ジャパン 和書発売元変更および再発売予定日延期のお知らせ」(2012年1月24日).シュプリンガー・ジャパンが和書出版から撤退することは昨年のうちにわかっていた.今後の基本線は「シュプリンガー・ジャパン→丸善出版」という業務移譲で話がまとまっているらしい.シュプリンガー・ジャパンはこれまで統計学本(とくに「R本」)をたくさん出してきたので,それらの行く末はかなり気になっている.少なくとも書店から消えてしまってもう入手不能ということにはならなさそうなのは幸いだ.

◆休日の┣┣" 撃ち —— 流氷┣┣" の群れはほとんどゲラ読みが終り,二章分を残すのみとなった.索引項目のピックアップ作業はそっくりそのまま./締切が同時の書評本二冊:マーク・カーランスキー[山本光伸訳]『牡蠣と紐育』(2011年12月10日刊行,扶桑社,東京,303 pp., ISBN:978-4-594-06504-1 → 目次版元ページ)とリチャード・コニフ[長野敬・赤松眞紀訳]『新種発見に挑んだ冒険者たち:地球生命の驚異に魅せられた博物学の時代』(2012年2月7日刊行,青土社,東京,479+55 pp., 本体価格3,600 円,ISBN:978-4-7917-6636-9 → 目次版元ページ)は明日カタをつけるぞ.

◆背徳つけ麺の昼下り —— 正午の気温は9.2度まで上がってきた(今日の最高気温).週末返上の流氷┣┣" 撃ちで目がちかちかしてきたのでランチへ現実逃避.本日のランチは,つくば市上横場にあるラーメン屋〈東池袋大勝軒うさぎ家〉にて「野菜もりチャーシュー(中盛)」を注文.テーブルに運ばれてきたのはいま流行りの太麺のつけ麺.お天道様に顔向けできないほどアブラぎっしゅでもなく,明朝のトイレがおそろしいほど辛いわけでもなく,つけ汁が濃厚すぎてゲル化していることもない.これなら意外にパーフェクトに食べられてしまいそうな味.ただし,つけ汁にはこれでもかというほど大量の野菜とチャーシューがすでに盛られていて,ある程度「具」を食べ進まないとそもそも麺を浸すスペースがない.今日のところはやや抑え気味に「中盛」にしたが,帰りがけに隣のテーブルの「大盛り」をのぞき見たら,それはそれは背徳度極大な丼山盛り状態だった.それに比べれば中盛りはかわいいものだ.

◆[欹耳袋]Togetter -「ソ連政府がルイセンコを支持した理由とは」 —— ソヴィエト国内での学問的&政治的文脈のなかでのルイセンコ主義と日本の敗戦前後にどのように移入されて根付いたのかを関連づけて理解する必要がある.個人的には“公”にルイセンコ主義やミチューリン運動が衰退した「末路」がどのようであったのかを知りたい.

◆日中は10度近くまで気温が上がったが,夕方から北西風が強くなり,体感気温が急降下.夕餉用の鰤のアラ炊きを仕込んでいる.アラはいったん湯通しして冷水で冷ましてからうろこと血合いを取り除く.昆布だしに味醂・日本酒・砂糖・濃口醤油を適量煮立ててからアラを投入.アクを取り切ったところで,大きく切った大根を入れておとしぶた.あとは中火で炊き込めばOK.とくに神経質になることはない.仕上がりよく完成したので,今夜は埼玉〈神亀〉の「純米・搾りたて生酒」を開栓.〈神亀〉といえば数年寝かせた熟成酒がウリだが,この「搾りたて生酒」はもっとフレッシュで,アルコール度数19度の濃厚な味わいがすばらしい.火入れも濾過もしていない“生生”で,かすかににごりが入っている.今夜は冷やで飲んだが,次はぬる燗にしてみようかなあ.日本中どこにいっても美酒に出会えるのはシアワセだ.

◆明日からは連日の締切フラッグが立つタイトな日々が続く.ときどき都内出撃日が混ざるが,基本的にはつくばに実在する.

◆本日の総歩数=816歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼△|夜△.計測値(前回比)=95.0kg(+2.0kg)/29.2%(+0.2%)


11 februari 2012(土)※早春の洛中は観光客がまばら

◆午前5時半に起床.昨夜はちと鯨飲しすぎたかも…….うう.ホテルの窓から琵琶湖が遠くに見える.その対岸には比叡山の山並みが.頂上付近は雪雲でもかかっているのか.平地は今日もいい天気になりそうだ.朝食前に日録を認めて,午前7時には一階のレストランへ.その後,また部屋に戻ってしばしうだうだする怠惰な出先の解放タイム.

◆洛南ミッション三日目 —— 午前9時過ぎに荷物をまとめてチェックアウト.各駅停車で京都にいったん戻り,コインロッカーにスーツケースを放り込む.週末だが観光客の姿はあまりない.今日は阿含宗の大きなイベントが京都であるらしく,案内係が八条口に立っていた.奈良線に乗り替えて洛南ミッション三日目の作戦開始.気持ちよく青空が広がっているが,空気はやや冷たい.黄檗にてミッション遂行.昼過ぎ,風もなくしだいに気温が上がってきたようだ.

◆洛南からいつもの北白川へ —— 洛南ミッションを終えて移動.あとは買い物をして帰るだけの単純な作業.再び奈良線で黄檗から東福寺へ.京阪電車に乗り換えて終点の出町柳へ.お昼時の百万遍交差点を突っ切って北白川まで歩く.まずは〈ガケ書房〉をひとまわり物色する.あったあった:田中美穂『わたしの小さな古本屋:倉敷「蟲文庫」に流れるやさしい時間』(2012年2月15日刊行,洋泉社,東京,175 pp., 本体価格1,400円,ISBN:978-4-86248-830-5 → 版元ページ蟲文庫).昨日の2月10日(金)の夜,ここガケ書房にて著者のトークショー〈わたしの小さな古本屋 in 京都〉があったとのこと(→ 「ガケ書房の催し」).イベントチラシとともに蟲文庫オリジナル亀マッチをいただきました.猫の絵葉書も付いていてお得感倍増! ぱらぱらとブラウズするに,ここもまた「猫系」古書店であることを実感(亀もいる!).しかも,店主は筋金入りの苔マニアでもあるとか.

にしむら酒店〉にて日本酒を物色していたら,店主が「〈風の森〉のレアものがあります」と,奥の氷温庫から一升瓶をもってきた:「風の森・純米大吟醸・笊籬採り・キヌヒカリ(おりがらみ)」.おりがらみとはいえ,事後におりを混ぜ込んだのではなく,樽の底の細かいおりをそのまま瓶詰めしたとのことで,本数がほとんどとれないらしい.一年寝かせたあとの一本.すでに伏見で〈蒼空〉も買ったから,さらに一升瓶を買い込むのは覚悟と体力が必要なのだが,古書と同じで一期一会を大切にしないと申し訳ない.えいやっとお買い上げ.一升瓶をぶら下げて京都駅まで戻る.

◆15:22京都発ののぞみに乗る.連日駆け回った三日間だった.新幹線のなかではもちろん流氷┣┣" の追っかけをする.午後7時過ぎにつくば着.晩ご飯を食べたらあとはもう寝るだけだ.

◆本日の総歩数=8203歩[うち「しっかり歩数」2325歩/24分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=未計測/未計測


10 februari 2012(金)※瀬田の唐橋,生態研セミナー

◆いつも通り午前4時半すぎに起床.今日は朝イチで六地蔵ミッションと石田ミッションを完全遂行し,その後,瀬田の唐橋を渡って京大生態研センターに攻め入る予定.今朝の最低気温は氷点下0.5度と微妙な冷え込み方.朝からよく晴れているが,昨日みたいに小雪が舞うこともあるのだろうか.薄雲の向こうから朝日が昇ってくる気配.夜明けがずいぶん早くなったことを実感する.

◆朝のミッション —— 気温は低いがいい日和.地下鉄東西線で移動.まずは石田にて洛南ミッションその一にとりかかる.必要な書類はすでに用意できたのだが,証拠ドキュメントにまだ不備があるとのことで,さらなる探索が必要.とりあえず今日のところは用務完了としておこう.続いて六地蔵にて洛南ミッションその二に従事する.しかし,こちらも後日の追撃が必要とのこと.何十回も平日に最前線に出向かなければいっこうに物事が進捗しないのは困ったことだ.

◆京都の昼もイノダから —— 洛南ミッションを終え,いったん京都駅に出る.この時期の京都は観光シーズンではないので駅の構内は空いている.瀬田の唐橋を渡る前の腹ごしらえは〈イノダコーヒ〉にてミックスサンド.琵琶湖線に乗るのはいったい何年ぶりのことだろう.彦根や近江八幡に行ったのもずいぶん前のことだ.快速は止まらないというので山科で各停に乗り換える.瀬田に着いたのは12時半だった.初めて降りる駅.

◆京大生態研セミナー —— 駅前ロータリーのバス停には学生が行列をつくっていた.京大生態研センター行きのバスを探す前にタクシーに乗り込むずぼらなワタクシ.瀬田の町並みを抜けて丘をのぼるタクシー.野山の開発エリアをかなり走ってやっと生態研センターに到着した.生態研センターのある一帯は「文化エリア」の指定を受けていて,龍谷大・関西医大・立命館大のキャンパスが点在している.タクシー料金は1,780円なり.生態研センターに来るのはもちろん初めて.椿センター長の居室で一休みしたのち第二講義室に移動する.午後2時から〈第234回生態研セミナー〉の始まり.ワタクシの噺は「分類思考と系統樹思考:体系学がたどってきた道」.ちょうど一時間のトークののち質疑タイム.e-mobileが入らなかったけど,高座のお勤めはつつがなく果たした.センター長の案内で所内を一回りしたのち,瀬田駅前のホテルまで送ってもらいチェックイン.

◆怒涛の駅前懇親会 —— 生態研センターは丘の上にあって,周囲にはまったく店がない.いったん瀬田駅前まで出てから懇親会会場の〈ぎゃれ楽坐〉へ.日中はぜんぜん感じなかったが,日暮れて琵琶湖からの冷たい風が吹きつけてきた.〈ぎゃれ楽坐〉は地元・滋賀の銘酒がずらりと並び,喜楽長・七本槍・不老泉・大治郎・薄桜・波乃音などを堪能いたしました.ごちそうさま〜.(うう…)

—— ホテルに帰還してそのまま沈没〜.明日は午前中に洛南ミッションの続き.午後はつくばに帰る.

◆本日の総歩数=4027歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前回比)=未計測/未計測


9 februari 2012(木)※ミッションは丑三つ時から

◆昨夜は早寝したので,午前2時前にさくっと起床.丑三つ時の観音台は上空高く満月が煌々と輝いていた.気温は+1.5度で意外に冷え込んでいない.真夜中の居室でニッチ専有,明日の琵琶湖高座のしたくをする.BGMは〈英雄の生涯〉から続いて〈グラゴル・ミサ〉へ.窓際なので冷たいすきま風がすーすー.全館空調が止まっている時間帯なので,個別空調全開.〈グラゴル・ミサ〉の終曲「イントラーダ」を聴くと何でもやれそうな気分になる.真夜中のヤナーチェクはヤバイ.午前5時過ぎ,琵琶湖高座のスライド編集が終わった.約150枚.これでやっと帰宅できる.夜明け前の観音台はかろうじて氷点下まで下がったが,冷え込みはないも同然.

◆[蒐書日誌]こんな本が —— チャールズ・ダーウィン[夏目大訳]『超訳 種の起源:生物はどのように進化してきたのか』(2012年3月近刊,技術評論社[tanQブックス], ISBN:9784774150048).「超訳」という表現に延髄反射で引いてしまうワタクシ.

◆半月ぶりの京都ミッションへ —— 予定よりも出発が遅くなってしまった.つくば市役所にて必要な書類をゲットしてからTXに乗る午前11時前.東京駅12:10発の博多行き新幹線のぞみ33号に乗る.都内はよく晴れて空気が冷たい.今日はJR富山駅の駅弁「ぶりかまめし」を買う.この「ぶりかまめし」は「ますのすし」で有名な〈〉という店が出している季節限定駅弁とのこと.飲み屋で出てくる「ぶりかま」は硬いホネをひとつひとつ取らないといけないが,この「ぶりかまめし」はホネまで全部食べられるように調理してある.しかも肉厚で食べごたえがあって美味.すし飯の上に昆布が敷き詰められている.白海老のトッピング.人気駅弁とのことだが納得できるうまさ.全国の駅弁がいながらにして買えてしまうのはさすが東京駅の底力.新富士駅通過.冠雪した富士山が抜けるような青空をバックにしてきれいすぎる.米原あたりは雪が降り続く.徐行運転.午後2時半に京都駅到着.曇り空.大きな荷物はコインロッカーに放り込み,近鉄に乗り換えて洛南ミッションの始まりだ

◆ルーツを求めて伏見区を右往左往する昼下り —— 洛南は曇りときどき晴れ.雲間からときおり大きな風花が舞い落ちる.やっぱり寒いのかな.丹波橋からてくてく歩いて伏見区役所へ.ところが,ここでは対応できないと言われ,とぼとぼと引き返す.途中の藤岡酒造で油を売って〈蒼空〉を買ってから(酒粕も買うべきだったか……),大手筋を縦断して伏見桃山駅へ.藤森に移動する.疎水の縁を歩き続け,青空から小雪が降り続く大岩街道をたどって,深草向畑の伏見区深草出張所へ.旧・紀伊郡深草村のことは深草出張所に訊けと伏見区役所で言われてここまで流れてきた.過去の家系図の復元には時間も手間も金もかかるのだ.来た甲斐があって,一世紀前のルーツがしだいに解明されていく.明治のはじめまではたどれたが,さらにその前は分家以前の石川県輪島市にさらなる深いルーツがあるとのこと,除籍簿が廃棄処分されていなければ問い合わせることも可能らしい.除籍簿の保管期間は現行は80年,現在は150年まで延長されているとのこと.

—— そんなこんなで今日はルーツ探しで一日が終わってしまった.今回の京都ミッションでは二つの作戦遂行を予定していたのだが,両方ともタイムアウト.また日を改めて来るしかなくなった.明日の午前中に再度トライするか.

◆今日はちょっと歩き回りすぎたかもしれないな.┣┣" ならぬ「すねこすり」が憑いてしまったよーな気配.

◆本日の総歩数=11054歩[うち「しっかり歩数」1865歩/19分].全コース×|×.朝○|昼○|夜×.計測値(前回比)=93.0kg(−0.6kg)/29.0%(+0.1%)


8 februari 2012(水)※とても逃げ切れない年末業務

◆午前5時前起床.気温は+5.7度.曇り空.北寄りの風.予報ではこれから気温が下がるらしい.本日もつくば実在日.大学の講義が終わったので,都内出撃がなくなり,その分だけ「つくば実在率」が有意に高まっている.午前8時,曇り空が西からだんだん明るくなってきた観音台.しかし,気温は下がりつつあり,いま+4.1度.また乾いて寒くなるのだろうか.室温は前日が暖かかったせいか+19.5度もある.午前9時,天気はゆっくり回復してきたが,外気温が+3.9度とさらに寒くなってきた.北風〜.

◆朝の┣┣" 撃ちはやっかいもの —— 東京の西の果てから次年度シラバスの「修正依頼」なる郵政省封書が届いた.何かワルいことを書いてしまったか?とビクビクして開封したところ,シラバスの「到達目標」に具体性がないから書き改めよ,との教育的指導あり.「分子進化学・分子系統学の基礎を理解し,自力で分子系統樹をつくるスキルを身につける」という文言では許されないらしい.ムダな抵抗をしてもしかたがないので(←コレ重要),「系統推定ソフトウエアMEGA version 5を用いて距離法・最節約法・最尤法などを用いて自力で分子系統樹をつくるスキルを身につける」と〝修正〟した.さらにもうひとつの修正依頼あり:「学習課題」は講義前に受講生が取り組むべき予習課題を具体的に与えよとのこと.たとえば,「分子進化の確率モデルとはどのようなものか? 尤度に基づく分子系統推定の原理とは何か?」ではダメだしが出る.全教員に事前配布されている「FD指南書」をひもとくと,シラバスに使うべき「言語表現(単語の使い方まで)」が事細かに指定されている.昨今はどこの大学でも程度のちがいはあれ同様の〝教育的指導〟が教員に対してなされているはずだ.ここでもまたムダな抵抗をしてもしかたがないので(←コレ重要),各回の講義の末尾一文字を一括変換することにより,〝教育的指導〟に従順にしたがったことにしてしまおう.この件,おしまいっ.もし再度の〝教育的指導〟が下されたらそれはそれでおもしろいけど,さらっとスルーしようかな.

◆正午だというのに+5度にも達しない寒さ.午前中はけっきょく教務┣┣" と戯れつつ終わってしまった…….

◆[欹耳袋]造反有理 —— The Economist「Scientific publishing: The price of information」(2012年2月4日).科学者側からのこの「反乱」には大きな意味がある.

◆午後も┣┣" のぬかるみは続く —— 曇り空の昼下がり.来週が会計システムの入力締切だというので急にじたばたしている.交付金の残額チェックがここ一年ほど手つかずだったりする.年度末の出張伺とか今頃出しているワタクシは廃人……(orz).昔だったら,ものすごく高い統計ソフトウエアとか数式処理ソフトウエアをぼんぼん買えばお金がどんどん消えていったのだが,いまは「R」があるのでお金の使いようがない.近隣の研究室に〝高利貸し〟でもするかぁ〜.農環研・闇金ウシジマ研究室./常盤台のあとしまつ.成績の追加修正は3月1日締切ということになった.

◆[蒐書日誌]山本聡美・西山美香(編)『九相図資料集成:死体の美術と文学』(2009年3月刊行,岩田書院,東京,本体価格8,900円,ISBN:978-4-87294-546-1 → 版元ページ).とてもおもしろそうな図集だが,さすがに公費購入したらフルボッコのタコ殴りにされるだろうなあ(笑).〈トトロの森〉の入り口に「Omnia vanitas; memento mori」とでも書いておこうかな.

◆撃つべき┣┣" はぜんぜん減っていないのに,年度末事務┣┣" にまとわりつかれたまま気がつけばもう夕方になってしまった.年度末までの出張伺を提出完了.明後日の「近江の国高座」のしたくもしないといけないのに…….ゲラ読みだってあるのに…….とりあえずいったん撤収して,あとのことは夜に何とかすることにしよう.

◆本日の総歩数=2757歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=93.6kg(−0.5kg)/28.9%(0.0%)


7 februari 2012(火)※前夜からの雨はまだ降り続く

◆午前5時前起床.気温+4.1度.見下ろす下界の路面は濡れている.雨は今は一時的に止んでいるようだが,また西の方から巨大な雨雲が接近中.これからまた降りだすにちがいない.午前6時,また雨が降りはじめ,夜明け前の遠景が白くぼやけてきた.いまの気温は+4.0度.いつものぴりぴり乾いた寒さではなく,じっとりと芯まで染みこむ寒さ.本降りの雨が降り続く観音台.気温は+4.7度で,夜明け前とほとんど変わっていない.居室のBGM.今日は Gustav Leonhardt / La Petite Band の〈マタイ受難曲〉から始まる.

◆[欹耳袋]第2回農業環境インベントリー研究会 「昆虫インベントリーの整備と有効利用のためのシステム」2012年2月23日(木)13:00~17:15,つくば国際会議場(エポカルつくば) 中会議室 → 参加登録サイト

◆午前の流氷┣┣" 撃ち —— お昼前.朝からずっと降り続いていた雨だったが,窓越しに外を見るかぎり,すでにやんでいるようだ.午前中は文化系統学論文集の流氷┣┣" 軍団の観察ちう.ゲラ本文の大きいフォントよりも脚注の細かいフォントをちくちくチェックする方が楽しいワタクシは変態かもしれない.BGMの〈マタイ受難曲〉がやっと終わったので,次は〈ヨハネ受難曲〉.S. Kijken / La Petit Band.

◆ランチタイムのBGM〈ヨハネ受難曲〉はまだ延々と受難を歌い続けている.昼下り.雨上がりの観音台.正午には+8.5度まで気温が上がったが,前線通過後は北風に変わりしだいに寒くなってきた.次なるBGMはシェーンベルクの〈ワルシャワの生き残り〉C. Abbado / Wiener Phil. ※だんだん重い音楽になっていく.

◆[欹耳袋]本に溺れたい「過去を探索する学問モデル」(2012年2月5日) —— 推論様式としての「アブダクション」を「法学的思考(forensic thinking)」と関連づけるのはとてもいい視点だ.以前読んだ:Douglas Walton『Abductive Reasoning』(2004年刊行,The University of Alabama Press, Tuscaloosa, xvi+303 pp., ISBN:0-8173-1441-5 → 目次版元ページ)によれば,アブダクションに関する研究は1990年代の人工知能(AI)分野で活発に研究されたが,それとは別の系譜があったという.Charles S. Peirce が第三の推論様式としてのアブダクションを提唱したのとほぼ同時期の19世紀後半,法学分野では証拠に基づくベストの説明への推論方法として事実上アブダクションと同一のものが確立されていたとのこと(pp. 22-26).一方,数理統計学の立場からは,有名な統計学者 C. R. Rao はまさにこの「法学的態度(forensic attitude)」が統計的思考にとって必須であると述べている: Foreword (pp. xi-xiii) in : M. L. Taper and S. R. Lele (eds.)『The Nature of Scientific Evidence: Statistical, Philosophical, and Empirical Considerations』(2004年刊行,The University of Chicago Press, Chicago, xviii+567 pp., ISBN:0-226-78957-8 [pbk] → 目次版元ページ).

—— 系統学・統計学・法学における共通の思考法としてのアブダクションの採用はとても興味深い.

◆午後も流氷┣┣" 撃ちは続く —— 陰鬱な曇り空が広がる観音台.ショスタコーヴィチ交響曲14番〈死者の歌〉が背後で流れている.仄暗いなあ〜.流氷┣┣" 軍団の観察をし続けているうちにもう夕方になってしまった.とりあえずワタクシが書いた計40ページ分のチェック完了.ついでに冒頭の20ページも読んだ.ゲラの分量は220ページあまりなので1/4は終わったことになる.今日は目が疲れたのでこれにて撤収〜.夜,いきなり大きな┣┣" が北白川と常盤台からやってきた.北白川のはそうでしたか“べ”さんの入れ知恵かー.常盤台のは教務関係の凡ミスでじたばた.うーむー.

◆[欹耳袋]孔子「真正的知识是知道无知的程度(Real knowledge is to know the extent of one's ignorance)」.※C. R. Rao が上記の巻頭言で引用していた孔子の格言.ええ言葉やなあ.

◆本日の総歩数=3068歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=94.1kg(−0.6kg)/28.9%(−0.1%)


6 februari 2012(月)※凍える氷雨が降り続く観音台

◆午前4時半起床.今朝は冷え込みはゆるんで氷点下0.7度.その後もう少し気温が下がり,今朝の最低気温は零下2.6度.雲間から朝日が射し込む観音台.午前8時になってやっと氷点から脱した.今日は居室に実在する可能性がかなり高い.

◆[蒐書日誌]熱帯の分子汎生物地理学 —— Michael Heads『Molecular Panbiogeography of the Tropics』(2012年1月刊行,University of California Press[Series: Species and Systematics Volume 4], Berkeley, x+566 pp., ISBN:978-0-520-27196-8 [hbk] → 目次版元ページ著者論文サイト).Léon Croizat に始まる「汎生物地理学(panbiogeography)」がたどった“学派”としての錯綜した現代史を振り返ることは興味深い.学問的伝統だけでなく,Croizat をはじめ汎生物地理学者と称される研究者たちの個人史もまたこみいっているように見えるからである.本書の著者 Michael Heads もさまざまなキャリアを経て,現在は独立研究者として活動している.本書が,分子データを用いた John C. Avise 風の「系統地理学(phylogeography)」やさらに昔の「分断生物地理学(vicariance biogeography)」ではけっしてない所以は,思想的背景がそもそも異なっているからだ.熱帯地域の地理的分布に関する詳細なケーススタディーをふまえた分厚い本書の“行間”を読んでいきたいと考えるのはいささか天邪鬼な読み手かもしれない.

◆午前の┣┣" 撃ち標的は年度末事務書類 —— 午前中は,年度末の業績報告書づくりを粛々と進める.「所外貢献」の成果を列挙せよとのことなので(締切は明日),行政部局等委嘱・大学等出講・国際学会等・技術相談対応・学会活動についてのアウトプットを拾い集める.そろそろ,交付金のやりくりにケリをつけないといけない.毎年,年度末になるまで会計システムを見ないというワルいくせが身についてしまった.今年度は2月14日が会計システムの締切だ.ということは,あと一週間しかないのかー.

昼前から降りだした冷たい雨は午後になってもしとしと降り続いている.いまのところの最高気温は正午前の+7.6度.この分だと,寒いまま一日が終わりそうな気配.久しぶりの長雨で空気が湿っている.

◆午後の事務書類┣┣" をちぎっては投げ —— 朝からの事務┣┣" 討伐はぜんぜん終わらない.ちくちくと「落ち穂拾い」を続けているようなもの.今年度の公費購入本のメニューを考えている.関係する分野の専門書ライブラリーを「公費」で整備するのは,自分の研究を推進するための資金投入なので問題なし.それが他の研究者のためにもなるのであれば副産物としての公共性をもつ.しかし,いつも使う本は手元にないと困る.だから,研究上ほんとうに大事な本は,その専有利用権を保証するためだけに,必ず私費で買う必要がある.うちの研究室には「統計学本」の外部貸出の依頼が割に頻繁にあるので,これはという本は公費と私費での二重購入を心がけている.同じ本を公私二重購入している研究者はほかにも知っている.

◆冷たい雨が降り続く夕暮れ時,ひさしぶりに John Cage の〈ピアノと管弦楽のためのコンサート〉をBGMに流したとたん,居室の空間がいたるところで歪んできた.午後6時過ぎ,「落ち穂拾い」がいちおう終わったようなのでメールで送って今日の┣┣" 撃ちはこれにて完了.外に出たら霧雨がまだ降り続いていた.

◆本日の総歩数=6622歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=94.7kg(+0.2kg)/29.1%(−0.6%)


5 februari 2012(日)※曇り空の日曜は籠ってお仕事

◆いつも通り午前5時前に起床する.氷点下の冷え込み.紅に燃える朝焼けがみごとだった.最低気温は零下4.5度.このまま快晴になるかと思いきや,薄曇りの日曜になってしまった.今日はどこにも行かずに引き籠る予定.流氷┣┣" 軍団を追いかける.

◆[欹耳袋]「ハッチンソンの樹」 —— 生態学者イヴリン・ハッチンソン(George Evelyn Hutchinson)の師弟系統樹が公開されている(→ jpg).なかなかみごとな「枝ぶり」ですな.この師弟系統樹の出典は:Yvette H. Edmundson 1971. Some components of the Hutchinson legend. Limnology and Oceanography, 16(2): 157-163 (pdf: open access).彼の個体群生態学の教科書:George Evelyn Hutchinson『An Introduction to Population Ecology』 (1978年刊行,Yale University Press, New Haven) は,学部から修士にかけて輪読した本だった.大判ハードカバーのこの「青本」はとてもいい造本で,イヴリン・ハッチンソンの薀蓄傾けまくりの脚註がとても印象的だった.その意味では「教科書」ではなかったのかもしれない.さらに調べてみると:Nancy G. Slack『G. Evelyn Hutchinson and the Invention of Modern Ecology』(2010年11月刊行,Yale University Press, New Haven, ISBN:9780300161380 → 版元ページ)なるハッチンソンの伝記が出ていたことを知った.さっそく発注完了.

◆たまには温かいお蕎麦を —— 曇り空の昼下り.朝からあまり日が差さず,最高気温は午後になってようやく7.7度に達した.今日は終日肌寒い.遅めのランチは金田の手打ちそば〈いちい〉にて.つくばの原風景である田んぼを遠くまで見渡せるテーブル席に通された.いつもは冷たいお蕎麦を注文するのだが,今日は心変わりして温かい「けんちん蕎麦」を注文し,十割の太蕎麦に替えてもらった.あつあつのけんちん汁にはおおぶりに切られた大根・茄子・里芋・椎茸・牛蒡・太葱・人参などの野菜に加えて鶏肉.体の芯から温まる.シンプルだが十割そばの味わいがダイレクトな一品.〈いちい〉はつくばでは人気があってランチタイムは混み合うことが多いが,昼下りの遅い時間帯の来店だったので他に客はほとんどいなかった.

◆寒い日の夕餉はほかほか海鮮鍋.立春なので〈獺祭〉の純米大吟醸「寒造早槽48・山田錦」を開栓.わーい,うまいよぉ〜.ほかの蔵元からも立春しぼりがいろいろ出回り始めている.シアワセな季節の到来.

◆[蒐書日誌]近刊予告 —— スコット・ギルバート,デイビッド・イーペル[正木進三・竹田真木生・田中誠二訳]『生態進化発生学:エコ・エボ・デボの夜明け』(2012年2月近刊,東海大学出版会,東京,ISBN:978-4-486-01859-9).「エボ・デボ(evo-devo)」以上に「エコ・エボ・デボ(eco evo devo)」という言葉遣いは美しくないので(発音ではなく字面に関して),もっとスマートにしてキャッチーな日本語の言い回しを広めてほしいものだ.カタカナではなくむしろ漢語表現のほうがいいのかもしれない.

◆本日の総歩数=1514歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=94.5kg(+1.3kg)/29.1%(−0.6%)


4 februari 2012(土)※立春の午後は新百合ヶ丘で宴

◆午前5時起床.立春とはいえ夜明け前は氷点下の冷え込み.今朝の最低気温も零下6.8度まで下がった.予報では日中は少しは暖かくなるとのこと.今日の午後はお出かけなので期待しよう.

◆朝の┣┣" 撃ち —— 来月の農業気象学会大会のホテルを堺東に確保した./日程的に近接する生態学会大会(滋賀)はホテル確保がもっとやっかいだ.割のいい選択肢がほとんどない.いろいろ迷った末に大津にホテルを確保した.とりあえず,これで年度末までの出張先の「宿」は心配なし.

◆[欹耳袋]『進化学事典』のもう一つの未執筆項目「進化史年表」については,もしちゃんとした裏付けが取れるのならば,Robert J. O'Hara〈Today in the Historical Sciences〉は参考になるだろう.20年ほど前 Darwin-L からほぼ毎日配信されていた進化学カレンダーだ.Darwin-L はすでに廃止されたメーリングリストのログが管理者によってうまく維持され続けている好例.管理者が「やめた(いなくなった)」からといって過去ログまできれいに抹消されるのは違和感がある.このように何十年経っても利用できるようにしておくというのもひとつの選択肢だ.

◆真昼間にワインを飲み続ける背徳の昼下り —— 11:25発のTX快速に乗る.真っ青な冬晴れの午後.北風が吹いているが日射しは暖かい.代々木上原にて乗り換えて急行待ち.都内も気温が上がってきた.午後1時過ぎに新百合ヶ丘に到着.昼飲み会まで時間があるので駅前を徘徊する.人出があるなあ.昔日の新百合ヶ丘って,だだっ広い空き地が茫漠と広がるだけの殺風景な駅前だったのになあ.隔世の感あり.

今日は新百合ヶ丘駅前のイタリア料理店〈La Campagna〉にて,毎年恒例になりつつあるオーケストラ打族の飲み会に参加した.午後2時開始という真昼間の飲み会は実に背徳.いつも立春の頃に開かれているこの飲み会は「のぐっちゃんを囲む会」と銘打たれている.東大オケの打楽器トレーナーを長年にわたって務められた元読売日響の野口力さんを囲む複数の大学オケ打族の集まりだ.年に一回の打族同窓会でもある.主賓は今年もお元気で奥様とともにすぐ近くのご自宅から登場.貸切の立食パーティ形式で,ワインが湯水のように飲みまくる大宴会になった.

道行く通行人が窓越しに覗き込むほどだったので,さぞやにぎやかだったのだろう.東京大学数物連携宇宙研究機構長の村山斉さんが東大オケ「56Cb」であることが判明.一次会は午後4時過ぎに記念撮影をしてからお開き.この日は引き続き場所を変えて二次会も企画されていたが,ワタクシはここで退散(つくばは遠すぎるので……).しかし,また来年もあるぞあるぞあるぞ.

—— 午後7時前につくば着.週末とはいえ「昼飲み」は背徳の快楽であった〜.

◆[系統樹思考]本日の反響:本に溺れたい「系統樹思考は歴史学的思考か?(2)」(2012年2月3日).前記事「系統樹思考は歴史学的思考か?」(2012年1月26日) に続く記事.系統樹思考が目指すものは,運命論でも宿命論でもなく,オブジェクトに関する由来関係の推定を行なうことである.伝承の系譜を経験的に解明することは,複数の対立する説明的歴史的シナリオ(プロセス仮説)を相互比較するための基盤にほかならない.歴史のもつ意義や解釈は仮説として“自由”に提示してもかまわない.しかし,推定値としての系譜と照らし合わせることは「歴史科学(palaetiology / historiography)」としての最低限の許容され得る制約だとワタクシは考える.

◆今日の都内は日中の最高気温が10.8度まで上がり,確かに春の気配を感じる暖かさだった.明日は健全にもつくばで過ごす日曜日.流氷┣┣" と対峙する週末でもある.

◆本日の総歩数=4915歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼×|夜△.計測値(前回比)=93.2kg(−0.2kg)/29.7%(0.0%)


3 februari 2012(金)※節分は茗荷谷にてカンヅメに

◆午前4時半すぎにのろのろ起床.活動性が低いのは部屋が寒いから.最低気温がマイナス7.7度まで下がった早朝に取手ピストン往復.朝日を浴びる観音台はまだ凍りついている.圃場の残雪はだいぶ融けたようだ.今日は茗荷谷でカンヅメになることが運命づけられている.東大の「生物統計学」レポートはすでに締め切りました.今年は日が変わる寸前の本塁滑り込み突入はなかったな.

◆自発的に座敷牢へ入る日 —— 9:55発のTX快速に乗る.からりと晴れてきりきり冷えてぱりぱり乾いた朝のTXは空き空き.さて,当初の予定よりもやや遅くなってしまったが,茗荷谷の座敷牢に向かうことにしよう.牢名主さまにその旨メールする.新御徒町で大江戸線に乗り換えて,さらに本郷三丁目で丸ノ内線へ.茗荷谷で下車したのは午前11時すぎだった.駅からほど近いビルの一室にある座敷牢に入牢完了.牢名主さまはすでにこもってワルイ文章を書き続けている.

お昼時,ランチタイムとのことで一時解放されたものの,自由な身にはなれない.午後1時過ぎに再び入牢タイム.春日通りは晴れて冬らしい雰囲気.

禁欲的な牢ではあるが,ときどき甘いものの差し入れがあったりする.Godiva のチョコとか.牢名主さまはとなりで初めてのツイッターにハマっている…….あゆの追っかけしてないでー.原稿書いて〜(涙).午後4時近くまで粘って,なんとか「リンネ」「ビュフォン」「ラマルク」「キュビエ」まで書き終えたが,「ジョフロワ・サンティレール」は終わらなかった.結局,今月中に再度の入牢をお代官様に申し付けられて,一同シュン…….

◆昨日の学位審査会のフォローアップ —— ロジスティック回帰分析を用いた HSI(habitat sustainability index)の統計モデリングについて.個々の SI(sustainability index)から二値変数への回帰をするというのは適切だが,選ばれたベスト・モデルと帰無モデルとのちがいの定量化が必要だろう.モデルとしての予測精度を評価すること以前に,対立するモデルとの比較の視点が求められる.もうひとつはモデルとしての頑健性.推定パラメーターの標本誤差がどれくらいあるのか.今回の審査対象となった博士論文では,統計解析の部分が根幹なので,そのリバイスと完成までにはもうひとふんばりの詰めが必要になる.Water deer には「キバノロ」というものものしい和名が付いていることを知った.

◆茗荷谷の座敷牢から解放され,つくばに帰り着いたのは午後7時前だった.原稿執筆カンヅメはまさに消耗戦だ.

◆校正┣┣" 軍団は夜陰に乗じて流氷とともに着岸する —— 午後7時前につくば帰還.あいかわらず風が冷たい.宅配便ボックスを開けるとずっしりと思い巨大な封筒が鎮座していて瞬時にして胸騒ぎが.予告通り:中尾央・三中信宏(編著)『文化系統学への招待:文化の進化パターンを探る』(2012年5月近刊,勁草書房,東京 → 目次)の初校ゲラ一式だった.こわごわ開封し百枚あまりのゲラをざっとブラウズする.二段組みの脚註の視力検査のごときフォントの小ささにはおそるべきものがあるぞ(そのおかげで頁数が節約できたか).この取っ組み合いも早くしないことには,今年のゴールデンウィークに予定通り本が出ないというおそるべき結末が待っている.いずれにしても,今月中はこのB4サイズのゲラを持ち歩くことが多くなりそう.

◆本日の座敷牢カンヅメは,今春刊行が宿命づけられている『進化学事典』の最後まで残った未執筆項目に決着をつけるためなのだが,「研究者列伝」についてはとりあえず担当項目数にして1/3が終わったので,怠けないかぎりなんとかなる気もする.一項目あたり400〜600字程度だからそれほど負担はない.しかし,伝記情報をどこから集めてくるかは懸案事項.Wikipedia は少なくとも日本語版はぜんぜん頼りにならない(「ラマルク」なんかもうサイテーで……).フランス人ならフランス語版,ドイツ人ならドイツ語版というふうに,もしWikipediaを多少とも利用するつもりならデフォルトの言語は相手によって変わる.今日持参した「紙」の資料は:Ilse Jahn and Michael Schmitt (eds.)『Darwin & Co.: Eine Geschichte der Biologie in Portraits (I / II)』(2001年刊行,Verlag C. H. Beck, München, 552+574 pp., ISBN:3-406-44638-8 [Band I] / ISBN:3-406-44639-6 [Band II] / ISBN:3-406-44642-6 [set])の二冊のみ.居室にある他の伝記類を召喚しないとダメかもしれない.深入りすると溺れそうな気もするが.

◆明日の午後は新百合ヶ丘にて毎年恒例“のぐっちゃん”の会.白昼から後先のことを考えずに飲んだくれるのだ.打族の暴走は誰にも止められない.

◆本日の総歩数=3785歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=未計測/未計測


2 februari 2012(木)※本郷にて学位審査会のお仕事

◆午前5時前起床.気温は氷点下2.7度と冷え込みはやや緩んでいる.ぼたん雪のようにひらひらと提出レポートが降り積もる夜明け前の光景.朝焼けから日の出へ.今朝の最低気温は氷点下3.1度までしか下がらなかったが,北風が吹いて体感的にはとても冷たい.もう冬眠するしかない.

◆午前の雑用┣┣" 撃ち —— 今月の出張伺やら何やら事務書類を書いているうちに,もうお昼休みが近づいてきた.午前11時の気温は+3.7度.北風が7メートルというのは寒すぎるかも.これから本郷に出撃する.午後は農学部にて学位審査会と公聴会.そういえば,本日,空飛ぶ教授は農環研に着地後,外部評価委員として┣┣" 撃ちに邁進されているはずだが,迎撃する間もなく福岡に飛び帰ってしまうらしい.残念無念.

◆ただいま読書中 —— マーク・カーランスキー[山本光伸訳]『牡蠣と紐育』(2011年12月10日刊行,扶桑社,東京,303 pp., ISBN:978-4-594-06504-1 → 目次版元ページ).17世紀にオランダ人が到達する前のマンハッタン島を含むニューヨークのウォーターフロント一帯がいかに自然に恵まれた豊穣な地域であったことかを著者は昔の旅行記や寄稿文を手がかりにして描いている.書名にもなっている「牡蠣」はその豊かさの象徴にほかならない.たとえ貧乏人であってもいつでも好きなだけ「牡蠣」が食べられるニューヨーク.第一部「エデンのカキ」の舞台はそのようなベル・エポックの回想である.牡蠣料理のレシピがいたるところに挿入されていてそれはそれで食欲が湧くのだが,1フィートもの巨大な牡蠣をもりもり食べたいとは思わないな.マンハッタン中心部にあって今なお人気の〈Grand Central Oyster Bar〉と本書に登場するようなかつての一般庶民を相手にした牡蠣料理屋,同じ「牡蠣」とはいえその落差の大きさにはめまいがする.

◆午後の本郷┣┣" 撃ち —— 晴れて乾いてぴりぴり寒い.北西から風速8メートル,瞬間的には17メートルの強風に吹きさらされる昼下り.これは試練だ.13:00発のTX区間快速にて都内出撃する.午後1時過ぎに根津の坂を上がる.曇って風がとても冷たい.隠れ部屋にて〈朝日堂〉のパンをmgmg.午後2時から博士論文の公聴会と審査会.さくさくと進み,予定通り終わった.おめでとうございます.午後6時過ぎにつくば帰還.とにかく今日は身を切る寒さの一日だった

◆[蒐書日誌]月刊みすず「読書アンケート特集」号 —— この号の p. 64 に掲載されているワタクシの選んだ5冊が載っている.毎年恒例のこの特集,細かい活字がびっしりと組まれていて,テキストの分量がハンパではない.まずは先頭から読み始めるが,ときどき飛ばし読みするので,最後まで到達したら今度は逆方向にさかのぼって読むことにする.幸いというか不幸にしてというか,ワタクシが挙げた5冊を取り上げた書評者は他にはいなかった.ざっとブラウズすると,複数の書評者がピックアップしている本が何冊かある.そういう本は書店で出会ったらきっと買い物かごに入れてしまうにちがいない.

◆┣┣" が押し寄せる夜 —— 今日が東大「生物統計学」のレポート締切日なので,火山弾のように┣┣" が降り注ぐのは覚悟していた.しかし,流氷に乗って初校ゲラ┣┣" が漂着するとは予想はしていたが〜.一両日中に着岸するとのこと.更けゆく氷点下の夜に,闇の彼方から迫り来る流氷┣┣" 軍団の遠吠えが聞こえる.

◆明日は茗荷谷にて座敷牢に入る日だ.身から出た錆というべきか.それとも,「上等だ,この野郎」と開き直るべきか.

◆本日の総歩数=7001歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=93.4kg(−0.1kg)/29.7%(0.0%)


1 februari 2012(水)※立春が近づいてほんのり暖か

◆午前5時前起床.今朝もきりきり冷え込んで,最低気温は氷点下7.2度まで下がった.どうやら例年にくらべて今年の寒気は強力みたいだ.昨年のちょうど今頃,九大伊都キャンパスの嚶鳴天空広場で冷たい海風に吹かれていたことを思い出す.ビッグ・アップルはマンハッタン,ビッグ・オレンジは伊都キャンパス.昨夜は本郷での補講二連荘がこたえたのか,睡魔が早い時間におぶさってきた.まあ,寝れば直ることなのだが.今日は終日つくばに実在する日.しかも居室に居続ける稀有の日だ.

◆午前の┣┣" 撃ち —— 高座┣┣" がそっくり輪廻転生した成績評価┣┣" を追っかける一日が始まる.松本産の成績評価┣┣" 一頭を仕留め,報告を信州に向けて発射した.いまパラレルに二頭を追いつめている.目を離したすきに明日締切の一頭がばたばたと逃げ回る居室は騒がしい.BGMだけはヒリヤード・アンサンブルの Nicolas Gombert が静かに流れ続けている.

◆[欹耳袋]セミナーやワークショップの「到達成果」をどう判定するか? —— 午前10時半から研究交流センター担当者との打合せ.ここ数年,毎年開催している分子系統学ワークショップに関するヒアリングと来年度の開催に向けての打合せ.年を追うごとに,「実施成果」に関する評価と反省がきびしく求められるようになってきた.昨年開催した分子系統ワークショップについても,受講生に対する事前アンケートと事後アンケートを照らしあわせて,講義・実習ごとの「理解到達度」と「理解度増分」の定量化に基づく個別チェックが今日の本題だった.受講生の事前知識レベルと講義内容の難易度のばらつき,さらには講師陣のキャリアによって結果に差が出る.幸い,大部分の講義・実習で“及第点”に達していた.こういう教育的企画の実施成果をどのように判定するかはなかなか難しい.「理解到達度」と「理解度増分」が低い講義・実習についての“説明責任”がコーディネーターにふりかかってくる.「到達度」が低いのはもともと難解な内容であることが大きな原因だ.「増分」についても受講生側の事前知識が低ければ事後との「差」が大きくなるのは当然予想されることなので,「増分」が小さいことそれ自体を問題視するのは公平ではないだろう.いずれにしても,来年度も開催される予定なので,改善点については前向きに対処することになる.

◆昼休みの観音台.風はあるものの日射しが暖かく,気温は8.5度まで上がってきた.圃場や駐車場で凍結していた雪もそこかしこでじわりと融けはじめている.全国的にはこの冬一番の寒気が流れ込んでいるらしいので,これからまた寒くなるのだろう.しかし,立春が間近いので,たまには春の気配があってもいい.

◆[欹耳袋]みすず書房の『月刊みすず』書評特集号はもう出ているらしい.でも,まだ家に届いてないよー(>_<).

◆午後の┣┣" 撃ち —— 逃げ回っていた往生際のワルイ町田産の成績評定┣┣" をやっと仕留め,オンライン成績登録を確定させた.明日が締切だったが,これでもう安心だ.残る成績登録┣┣" は4頭に減ったが,うち一頭がふいに逃亡した.即捕獲して独房へ監禁する.南大沢産の成績判定┣┣" 一頭を母川回帰させ,常盤台産の┣┣" もやっと仕留めた.残るは本郷キャンパス産と弥生キャンパス産の2頭だが,成績報告の締切までまだ少し余裕があるので,しばらくこのまま放牧場で観察を続けることにする.

◆[欹耳袋]「歴史言語学の方法」研究会 —— 年明けにプロポーザルがあった〈言語の系統関係を探る-その方法論と歴史的研究における意味-〉の2012年度第3回研究会「「樹」について考える」の企画が動き始めた.開催期間と場所は下記の通り:2013年2月9日(土)〜10日(日),国立民族学博物館講堂(→地図),吹田市.すでに公開されているプログラム案を下記に記しておく:

  1. オーストロネシア語族と系統樹:なぜ今、樹について考えるのか
    菊澤律子(国立民族学博物館)
  2. 生物・写本・言語におけるツリーとネットワーク:系統推定論における構造モデル選択について
    三中信宏(農業環境技術研究所/東京大学大学院農学生命科学研究科)
  3. 遺伝学におけるツリー(仮題)
    木村亮介(琉球大学亜熱帯島嶼科学超域研究推進機構)
  4. 死語の方言と系統樹モデル:中世イラン語東方言の例から
    吉田 豊(京都大学)
  5. Problems in Blust's Proto-Philippine Hypothesis (仮題)
    Lawrence A. Reid (ハワイ大学)

—— 一年以上も先の企画なので,今後,講演はさらに増えることが予想される.

◆ついでに,年度末までに予定されている高座のメモクリップ:

  • 「分類思考と系統樹思考:体系学がたどってきた道」.第234回生態研セミナー.2012年2月10日(金)14:00~17:00,京都大学生態学研究センター(大津)→ 要旨
  • 「R入門」日本農業気象学会2012年全国大会・若手の会「R講習会」,2012年3月14日(水)18:00〜(大阪府立大学,堺)
  • 「形態測定学の戦略的展開:過去・現在・未来」日本生態学会第59回大会・自由集会W03「道具としての「形態測定学」:量的phenotypingの活用法 」,2012年3月17日(土)15:00〜17:00(龍谷大学,大津)

◆今日の日中は北風が冷たかったが,最高気温は12.1度まで上がった.10度を越えたのは久しぶり.夕暮れ間際の時間帯に農環研の外側の集落を徘徊してきた.逢魔が時の薄暗がりにうろつくのは魑魅魍魎のたぐいと相場は決まっている.日の入りが遅くなってきたなあ.午後5時過ぎに撤収し帰宅.夜になると睡魔が降臨してきて困るんですけど…….

◆明日は午後から本郷にて博士論文の公聴会と審査会がある.

◆本日の総歩数=6621歩[うち「しっかり歩数」3680歩/0分].全コース×|×.朝○|昼○|夜△.計測値(前回比)=93.5kg(+0.4kg)/29.7%(−0.2%)


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[sinds 19 april 2007] 無料アクセスログホームページ 素材集