財団法人 大学セミナー・ハウス主催
第187回大学共同セミナー

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科学論は科学の敵なのか?
――科学をめぐる言説のゆくえを見据える――
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【運営委員】
     村上 陽一郎(国際基督教大学)
     長谷川 眞理子(早稲田大学)
     三中 信宏(農業環境技術研究所)
     伊藤 正直(東京大学)
【URL 】<http://www1k.mesh.ne.jp/iush/187.htm>
【主催】財団法人 大学セミナー・ハウス <http://www.mesh.ne.jp/iush/>
【期日】2002年1月19日(土)〜20日(日)[1泊2日]
【場所】大学セミナー・ハウス(東京都八王子市下柚木1987-1)
【交通】<http://www.mesh.ne.jp/iush/tizu.htm> をご覧ください

《開催趣旨》
 科学っていったい何?――私たちがいま関わっている自然科学の基礎は,17世紀ヨーロッパにおいて築かれた.以後,科学は自然界のもろもろの現象に説明を与え,その成果はさまざまな技術を生み出してきた.私たちが住む現代社会が成り立つには,この科学技術の成果はなくてはならない.しかし,そもそも「科学」とは何であるのか,それは何を目指しているのかをあらためて問いかけてみると,答えるのが難しい根源的問題がいくつも思い浮かぶ:何が「科学的」で何が「非科学的」なのか;科学は「真実」を明らかにしているのか;科学の「進歩」とはいったい何だろうか?(科学は本当に「進歩」しているのだろうか);「非科学的」なものは価値がないのだろうか.
 技術って誰のため?――科学をめぐるこのような根源的な問いかけは,これまでは哲学的な関心から論議されることが多かった.しかし,現代の私たちにとって,それは新しい意味をもつだろう.なぜなら,現代の科学技術と私たちの生活との関係は,以前とは異なるものになってきているからである.科学技術の長足の発展は,私たちの生活にさまざまなプラスの産物とともに多くのマイナスの影響をももたらしてきた.したがって,科学技術の発展が人類を幸せにするものだとは,もはやナイーヴに信じることはできない.同時に,現代では,私たちはただユーザーとして技術の使い方を習得していればよいというものでもない.そのような技術は果たして自分たちにとって本当によいものなのか,そのような技術を使うことが倫理的に正しい選択であるのかなどまで,私たち自身が判断をせまられる性質のものに変化してきている.この文脈の中で,科学者の社会的責任が何かという問題,ならびに市民と科学との健全な関係とはどういうものかという問題も,かつてとは異なる様相を呈してきた.
 科学論って何が言いたいの?――一方で,科学と科学者を見る「まなざし」にも変化があらわれてきた.従来の科学史・科学哲学とは別に,1980年代ごろから「科学論」,「科学と社会」,「科学技術社会論(STS: Science, Technology, Society)」と呼ばれる分野が新たに登場し,科学・技術・社会の相互の関わりあいについて分析している.この科学論という新たな試みは,科学とその影響について何を明らかにしてきたのだろうか.また,科学論は,科学と人類との接点で生じている困難な問題群について,何らかの解決への貢献をし得るのだろうか.そもそも科学論は,何を目指しているのだろうか.ポストモダン科学論と呼ばれるある「ものの見方」にいたっては,科学の客観性や真理性を否定し,科学も他の神話の体系と本質的に変わらない自然の一つの見方にすぎないという主張を展開してきた.それは,科学者との間に,「サイエンス・ウォーズ」と呼ばれる論争を巻き起こすこととなった.科学をめぐるさまざまな言説を私たちはどのように評価していけばいいのだろうか.
 本セミナーでは,現代の科学をめぐる諸問題について,「科学者」の考えと「科学論者」の考えとを突き合わせ,科学・技術に発する現代社会の諸問題を解決していく上で有効な方策はどのようにして求められるかを探ってみたい.(長谷川眞理子)

《講演要旨》
*** 村上 陽一郎(国際基督教大学)***
科学論は,科学批判を本質とする.何故ならば通常科学者は自らの携わる科学という営みに対して,批判を持ち合わせないからである.そして批判のないものは健康ではない.しかしでは,科学論者の批判は誰がするのか.一つの可能性は,逆もまた真というわけで,科学者であってよい.いやむしろ,そうであることが望ましい.この相互関係は決して「敵対関係」であるはずはない.ときに不幸な誤解からそうした関係が見られるにしても.不幸は何から生じたのか,良き関係とはどのようなものか.私なりの見解を示してみたい.

*** 長谷川 眞理子(早稲田大学)***
ある表現によると,科学者がアリだとすると,科学哲学者,科学論者とは,そのアリが何をやっているかを研究する人々なのだそうだ.しかし,これまでに,アリ研究者がアリについて言ったことが,アリの行動を変えさせることがあったろうか? 科学者も人間であり,もちろん多くの誤りを犯す.科学がどのように進められていくのか,科学と一般社会の関係はどうあるべきなのか,科学者以外の第三者が批判的な目を向けることは大事である.しかし,これまで,科学論が科学について述べてきたことは,科学者にとっては単に「余計なお世話」にすぎなかったのではないだろうか? 科学と科学論が健全な関係を保ち,「余計なお世話」で終わらないためにはどうすればよいのか,考えてみよう.

*** 三中 信宏(農業環境技術研究所)***
科学史・科学哲学には言説の経験的テストという「科学的」な制約があったはずである.科学者がデータに基づく仮説のテストを重要視するのと同様に,科学に関する言説もまた実際の科学から得られるデータによってテストされる必要がある.科学論者の主張はどのようにすればテストできるのだろうか.そもそも彼らの主張はテストすることが可能なのだろうか.科学者は,まだテストされていない,あるいはテストできない言説や主張に対してはきわめて懐疑的(冷淡)である.今の科学論は科学にとっての「敵」でさえないのかもしれない.

《参考文献》
・特集:サイエンス・ウォーズ. 現代思想, 1998年11月号, 青土社, 1998年.
・特集:サイエンス・スタディーズ. 現代思想, 2001年8月号, 青土社, 2001年.
・ロビン・ダンバー 1997. 科学が嫌われる理由. 青土社.
・アラン・ソーカル,ジャン・ブリクモン 2000. 知の欺瞞:ポストモダン思想における科学の濫用. 岩波書店.

《プログラム》 ○1月19日(土)
13:00 - 14:00 受付・チェックイン
14:00 - 14:15 開講
14:15 - 15:45 村上陽一郎講演(基調報告)
15:45 - 16:00 休憩(写真撮影)
16:00 - 17:00 長谷川眞理子講演
17:00 - 18:00 三中信宏講演
18:00 - 19:00 夕食・入浴
19:00 - 21:00 議論(村上・長谷川・三中)
○1月20日(日)
08:00 - 09:00 朝食
09:00 - 11:00 参加者によるコメント・議論
11:00 - 11:10 休憩
11:10 - 12:00 総括
12:00 - 12:10 閉講
12:20 - 昼食後解散

《募集要項》
募集人員 約90名(先着順)
対  象 大学生,大学院生,社会人
参 加 費 学生=10,000円;社会人=13,000円(宿泊・食事代を含む)
申込方法 締切日までに次の手続きを完了させてください:
1) 下記申込書をお送りください.申込方法は,Email・
ホームページ・FAX・郵送のいずれかをご利用ください.
2) 参加費(全額)を下記銀行口座にお振り込み下さい.
名称:三井住友銀行・北野支店(店番:268)
普通口座番号:535284/名義:(財)大学セミナー・ハウス
※【振込み時の注意点】「振込み人(ご依頼人)」の欄には
「187」「お名前」「電話番号」を必ずご記入下さい:
〈例〉187 セミナー太郎 033-123-4567
※【参加費は前納です】参加費の振込みが確認できないと,決定
通知をお送りできませんのでご注意下さい.参加決定の選に洩れ
た方,および1月16日(水)までに参加取り止めの連絡をいただ
いた方には前納された参加費を返金します.
申 込 先 ・Email iush-kikaku@mub.biglobe.ne.jp
・URL http://www.mesh.ne.jp/iush/
・FAX 0426-76-0266
・郵送 〒192-0372 東京都八王子市下柚木1987-1
財団法人 大学セミナー・ハウス 企画広報課
申込締切 2002年1月9日(水)
※定員に達しない場合は締切後も引き続き申し込みを受け付けます.
決定通知 応募理由などを考慮のうえ決定し,1月10日(木)から郵送します.
お問合せ 財団法人 大学セミナー・ハウス 企画広報課
TEL: 0426-76-8532(直通),TEL: 0426-76-8511(代表)
FAX: 0426-76-0266,Email: iush-kikaku@mub.biglobe.ne.jp
URL: http://www.mesh.ne.jp/iush/

第187回大学共同セミナー参加申込書(上の点線から切り取ってご返送ください)

氏名(ふりがな):            (          )
生年月日: 19   年   月   日
性別: 男・女 (←いずれかに○)
現住所 〒       
                          
    
TEL                 
FAX                 
E-mailアドレス                               
当日のプログラムへのメールアドレス記載: 可・不可(←いずれかに○)
所属:
大学生 大学    学部      学科    年生
大学院生 大学大学院         研究科   専攻
修士・博士   年次
社会人 職業:         勤務先:          
       
応募理由(今回のテーマに関心を持たれた理由をお書きください):
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