【書名】裝釘考
【著者】西野嘉章
【刊行】2000年04月15日
【出版】玄風舎,東京
【頁数】291 pp.+ 72 pl.[函入り]
【価格】5,800円(本体価格)
【ISBN】4-250-20025-6 (hardcover)

 

【書評】※Copyright 2001 by MINAKA Nobuhiro. All rights reserved

本の「かたち」はこんなにさまざまだったのか

三中信宏

 明治以降の書物の装丁の変遷を論じた本書は,それ自体がたいへん凝った「つくり」になっている.あえて上質紙を使っていない点,本文の組み方,豊富なカラー図版など,日頃接している「本」とはまったく異なる質感が味わえる.装丁のキーワードひとつひとつについて,それに関連する本を取り上げるという形式で,数ページの読み切り型のエッセイが連続する.この形式はたいへん読みやすく,おびただしい数の書物が小気味良く捌かれている.
 欲を言えば,カラー図版に示された本が,本文のどこで解説されているのかの参照づけがほしいところだが,そういう安直な「効率」を口にしていたのでは本書の真の価値を理解したことにはならないのかもしれない.本文と図版とは関連し合いながらも別個の存在として読むのもまた愉しみの一つだろう.おそらくは,一度だけさっと通読するのではなく,進み,戻り,立ち止まりながら,読者が繰り返しページをめくることを見越してつくられた本なのかとつい深読みしてしまった.
 明治以降の日本の装丁は,和書・洋書の混在の中で,次々にあたらしい形式を創造していった.本書は,この装丁史という限定されたテーマを論じた本なのだが,そこに盛り込まれた数々のエピソードはもっと幅広い.今和次郎とともに「考現学」を生みだした吉田謙吉が装丁家として活躍していたとは意外だった.もうひとつ,戦前に出されていたプロレタリア文学書の装丁の何と斬新なことか.
 価格を考えれば,明らかに一般向けの本ではない.しかし,本書に出会えたことは私にとっては幸せだ.(なお,紀田順一郎は本書の詳細なオンライン書評を書いている.平凡社『デジタル月刊百科』2000年11月号<http://ds.hbi.ne.jp/netencyhome/>を見られたい.)

【目次】
近代造本史畧−序にかえて 3
活字 21
南京綴じ 27
和裝 33
改題御届 39
背文字 43
稀密畫 49
合卷 53
異裝 57
新裝 63
小口 69
繪表紙 73
總クロース裝 79
墨ベタ 83
軟表紙 87
輕裝 91
色 95
三六判 101
線 107
裝畫 113
袋紙 117
菊判 123
見返し 129
圖樣 135
盛裝 139
二度刷り 143
外函 147
銀箔 153
金版 157
袖珍本 161
裏繪 167
包紙 171
圖案 175
發行日 179
革裝 185
込み物 191
作字 199
誤植 203
定價 207
用紙 213
横文字 219
クラフト紙 223
繪文字 229
假綴じ 233
三方アンカット 237
ノンブル 241
遊び紙 245
繼ぎ表紙 249
メタル裝 253
普及版 259
歴史の文字−記載・活字・活版 263
參考文獻抄録 275
あとがき 287