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本棚の記憶

みなか先生の読書人生と〈みなか食堂〉の自炊爛漫


三中信宏

2026年6月10日 第1刷刊行


灯光舎[本と人生・2]、京都,xiv+277+17 pp.
本体価格2,300円, ISBN:978-4-909992-11-6

版元ページ集音帖




目次

はじめに —— ようおこしやしとくれやしたなあ i

プロローグ〈上がりの出囃子〉 “文は人なり”、“食は人なり” 1

〈先付け〉 お座敷と高座 11

【京都篇】 21

1 伊勢湾台風のおぼろげな記憶 23
2 秋茱萸の滋味 24
3 深草の原っぱから伏見稲荷の山へ 26
4 おくどさんと天窓:「正調きつね丼」と「玉子丼」 27
5 剥製標本とコレクター癖の開眼 31
6 麦飯のあじない想い出:「土鍋玄米糅飯」 33
7 叩けば音が出るマリンバ 35
8 お豆さんあれこれ:「五目豆」と「黒豆」 37
9 童話と図鑑、テクストとパラテクスト 41
10 “味の素”は何処へ:「肉じゃが」と「皮付き新じゃがの山椒風味煮っころがし」 43
11 速記を学んだ日々 47
12 かしわの天国:「鶏むね肉と大根の炊いたん」と「鶏手羽元の炊いたん」 50
13 稲藁ひとり遊び 54
14 ないもんねだり:「なま節の炊いたん」 58
15 “サードプレイス”を求めて(1):山遊びと川遊び 61
16 あほぼんとぼけなす:「茄子とはぐら瓜の煮びたし」と「秋茄子と万願寺の煮びたし」 64
17 鉄分いささか多くして、東奔西走南船北馬 67
18 日々の常備菜:「基本のポテトサラダ」と「夏野菜のラタトゥイユ」 70
19 “サードプレイス”を求めて(2):高校うらおもて 74
20 京女おそるべし:「コロナ風たまごサンド」 81

〈箸休め(1)〉 分類と系統 87

【東京篇】 93

1 乱世東大駒場寮:東京ひとり暮らしの始まり 95
2 鍋もともに育つ:「牛すね肉カレー」と「丸ごとキャベツカレー」 100
3 ここは“下宿館”か、はたまた“一刻館”か:千駄木ライフ(1) 105
4 フライパンで決まる:「ハンバーグ」と「スペイン風オムレツ」 109
5 元祖〈みなか食堂〉創業の頃:千駄木ライフ(2) 115
6 たくさんつくれ:「けんちん汁」 118
7 谷根千の細道へ:千駄木ライフ(3) 120
8 他人には言えない黒歴史:「(やや背徳の)ガーリックバター醤油ポークソテー丼」 122
9 本棚に記憶が刻まれている 125
10 厨房修行:「銀杏むき」から「銀杏ご飯」へ 129
11 一冊の本が一生ついて回る 133
12 食の記憶は揮発しない:「一斤カレーパン」 135
13 古書とのひそやかな対話 137
14 失われた麺を求めて:「はるばるてい香麺」への道のり 141
15 形あるものはいずれなくなる 145
16 美麗島の味はいかに:「魯肉飯」 148
17 図書館に根を生やす 150
18 寒い季節に:「アイリッシュ・シチュー」と「ソーダ・ブレッド」 153
19 自分だけの読書空間を確保する 156
20 寿ぐパーティー料理:「ローストビーフ」 159

〈箸休め(2)〉 生物学と哲学 162

【つくば篇】 169

1 ある“多体問題”の顛末、あるいは遠距離という宿命 171
2 “麺食い”への道は遠い:「花クレソンのパスタ」 176
3 ところかまわず「キャレル」と「クロチュール」を 178
4 暑ければ冷たくして:「桃とモッツァレラのパスタ」 181
5 パスタは千変万化する 183
6 軽食ではないパスタ:「ボローニャ風ラグー」 187
7 『イタリア料理大全』を読んで 189
8 逃亡先としての厨房:「丸干し大根めし」と「玄米栗ご飯」 195
9 行き詰まったときの飯の本あれこれ 196
10 寒い季節の定番:「牛肉の黒ビール煮込み」と「牛すね肉の菜の花ポトフ」 197
11 読者は一日にしてならず 201
12 冷たいスープの悦楽:「赤ビーツの冷製ポタージュ」 205
13 伝記読みの愉しみ 205
14 ぎゅうぎゅう詰めて:「マジャール風パプリカ肉詰め」と「白菜と豚バラ肉の土鍋蒸し」 213
15 日記は人生の襖の下張 219
16 温製スープで温まる:「蓮藕排骨湯」と「クレソンのポタージュ」 225
17 まとまりとしての蔵書のゆくえ 228
18 たまにはお魚もどうぞ:「土鍋鯛めし」 233
19 いつかは来る最後の“蔵書じまい” 235
20 〆が大切:「丸鶏ローストチキン」と「土鍋鶏雑炊」 241

〈食後酒〉 ことばづきあい 245

エピローグ〈下がりの受け囃子〉 去者日以疏、来者日已親 253

おわりに:おはようおかえりやす 267

文献 [11-17]
店名索引 [10]
事項索引 [4-10]
人名索引 [2-3]
料理索引 [1]


興行


幕が上がる前の舞台袖にて

私が本書で書き記すことどもは、過去から現代へとつながる、私に関わる記憶の “かけら” をひとつひとつ見つかるままに寄せ集めているだけかもしれない。

まとまりのないものから架空の物語をつむぐ文才は、もともと私には無縁だ。日頃から自分のウェブ日記やツイッター(現「𝕏」)やフェイスブックなどでさんざん書き散らしてきたさまざまなことがらは、いずれはまとまったかたちになるのか、あるいはばらばらのままふたたび散逸してしまうのか、私自身にも皆目わからない。しかし、書かないと消えてしまうかもしれないことどもはけっきょく無駄になることがわかっていても飽くことなく書き記すしかない。

とりわけ、「本の記憶」と「食の記憶」は覚えているうちに書き留めないとすぐ揮発してしまう。本書では、私の人生の旅路のあちこちに散らばる記憶の断片たち——放っておけばそのまま忘却の淵に沈んだだろう——を気の向くまますくい上げた。日々の厨房で私がつくった料理のレシピ集であると同時に、年季の入った “紙魚” の手になる読書録でもある。

“文は人なり” 、 “食は人なり” —— 文を読んだり書いたりすることが “物狂ひ” であるのとまったく同じく、自ら食べるものを調理する厨房での作業もまたどんどん深くのめり込んでしまう “物狂ひ” と言うしかない。以下に続く章では、二人の “物狂ひ” たちの掛け合いをどうぞお楽しみいただければ幸いです。

*** *** ***

本書を手に取られた奇特なみなさま方、〈みなか文庫〉と〈みなか食堂〉へ ようおこしやしとくれやしたなあ。

[「はじめに」と「プロローグ」から抜粋編集]


心に移り行くよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、
怪しうこそ物狂ほしけれ。
(吉田兼好 1330 『徒然草』第1段)


Last Modified: 1 June 2026 by MINAKA Nobuhiro