【書名】雑誌の死に方:"生き物"としての雑誌、その生態学
【著者】浜崎廣
【刊行】1998年
【出版】出版ニュース社,東京
【頁数】8 pl.+288pp.
【定価】2,200円(本体価格)
【ISBN】4-7852-0079-0

【書評】※Copyright 2000 by MINAKA Nobuhiro. All rights reserved

文化的「生物」としての雑誌

明治以降の「大衆雑誌」の消長をたどった本です。著者はすでに絶滅した『週間平凡』の元編集長です。なぜ"雑誌"は「生き物」であるのか−この点に関して著者は:

1)寿命があること
2)環境に応じて進化すること
3)同類個体を形成し、一定の生態系をつくること

の3点を挙げます。1と2はそれほど問題ないですが、3については用語に疑問が残ります。要するに、雑誌世界には大きな系統群−女性誌とか少年誌−がいくつかあって、それぞれの系統内で姉妹誌が分化していく、という意味です。

創刊号と廃刊号によって時空的に限定された"雑誌"は、「文化的個物」として文化進化の担い手となります。著者は、各雑誌の生存年月を追跡調査し、ある特定の時期−言論統制の始まった明治中期や太平洋戦争直後−に大量絶滅があったこと、雑誌の寿命の決定要因は何か、など興味深い説明をしています。 楽しい本です。データもしっかりしているので、資料的価値もあると思います。

三中信宏(8/December/2000)

【目次】
はじめに
第一章:雑誌は生き物である
     生き物と言われる理由/長寿雑誌ベスト12/7つに分類される雑誌の生態系
第二章:時代によって寿命はどう変わったか
     明治初期から昭和戦中期までの雑誌寿命を延ばす出来事、縮める出来事/各時代の寿命表
第三章:別の角度から見た雑誌の死と寿命
     同類個体の相互生存関係
第四章:死なせ方を熟知していた2人の男
     大橋佐平の雑誌経営論と、宮武外骨の雑誌自殺論
第五章:"生き物"だから、いつかは死ぬ
     雑誌の死の要因/内的要因と外的要因
第六章:死が意味するもの。その終焉の美学
     廃刊告知にみられる4つの型
参考文献