【書名】ジェイムズ・ハットン:地球の年齢を発見した科学者
【著者】ジャック・レプチェック
【訳者】平野和子
【刊行】2004年10月20日
【出版】春秋社,東京
【頁数】xvi+253+xiii pp.
【価格】2,500円(本体価格)
【ISBN】4-393-32219-3
【原書】Jack Repcheck (2003), The Man Who Found Time: James Hutton and the Discovery of the Earth's Antiquity. Basic Books.

【書評】※Copyright 2005 by MINAKA Nobuhiro. All rights reserved

17世紀末のダリエン事件に端を発するスコットランドとイングランドの確執(闘争)を背景に,18世紀のエディンバラに活躍した科学者ハットンの生涯と彼の学説(「火成説」)の辿った運命を描写する.北都を特徴づける多くの科学者や思想家が登場する.ハットンが明文化した「斉一主義」は,19世紀に入って,チャールズ・ライエルの地質学やチャールズ・ダーウィンの進化学に決定的な影響を及ぼした.

本書は,一般向けに書かれた伝記なので筋を見通しやすくするためか,いささか“直線的”な書き方が鼻につく箇所もある(とくに後半の章で).しかし,ウェルナーの「水成説」と対決しつつ,さらに当時主流的な考えだった「聖書地質学」をも敵に回しつつ,ハットンの「火成説」がどのように形成され,広まっていったのかがよくわかる1冊になっていると感じた.

なお,文中でA. G. Wernerの活動した地を「フライブルグ」(“Freiburg”の意味か)と書いているが,正しくは「フライベルク」(“Freiberg”)である.

三中信宏(11/January/2005)


【目次】
日本語版序文:「斉一説」が新しい地球観と出会うとき(川上紳一) i

プロローグ 3
第1話:時の深奥を覗き見る 17
第2話:最初のアダムとイヴが,そしてカインとアベルが…… 31
第3話:古くて煙にまみれた町 53
第4話:静けさの前の嵐 77
第5話:青春の彷徨 95
第6話:土壌のパラドックス 115
第7話:北のアテネ 131
第8話:疑問が解けた! 161
第9話:ハットンの忠実な伝記作者 181
第10話:ハットン派の革命 199
エピローグ 223
解題補遺:ハットンの業績とキーワードの解説 233
謝辞 242

訳者あとがき 249
参考文献 [i-xiii]