【書名】中国飲食文化
【著者】王仁湘
【訳者】鈴木博
【刊行】2001年11月21日
【出版】青土社,東京
【頁数】742 pp.
【価格】6,800円(本体価格)
【ISBN】4-7917-5923-0
【原書】王仁湘(1993)『飲食与中国文化』,人民出版社,北京.

【目次】
序文:口べたが食を論ず 9
第1章:飲食と中国の太古の文化 15
第2章:五味の調和 29
第3章:祭時飲饌 79
第4章:太官,庖人,食経 159
第5章:茶道 213
第6章:酒中三昧 249
第7章:食べものが薬 307
第8章:食事の独特な方式 341
第9章:飲食の芸術 375
第10章:食礼 489
第11章:古代の飲食観 529
第12章:食功論 611
あとがき 733
原注 735
訳者あとがき 739

【感想】
「もう,参りました」って感じ.中華料理は〈命懸け〉の文化そのものだったことを知らされる.生きている間はもちろん喰い,死んでなお喰い続ける――「中国民族の文化は,口の文化といってもさしつかえない.... いわゆる‘口の文化’とは‘喫(食)の文化’―飲食文化―にほかならない」(p.626)などと断言された日には,もとより太刀打ちできるはずがない.

本書は文字どおり「中国四千年」の中華料理を文化として総ざらえした力作である.その圧倒的分量と文字量は,満腹を通り越して,苦悶ですらある.単なる「料理の本」ではけっしてない.むしろ,飲食がそのまま文化に連なっていることをおびただしい典拠を引きつつ論じていく.

かの〈焚書坑儒〉は秦の始皇帝が不老不死の薬を求めたことがきっかけだった(p.548)とか,定番である〈東坡肉〉のいわれ(p.574)とか,さまざまなエピソードを混ぜこみつつ,中国の社会・歴史・政治・文化の流れをたどる.何よりも,中国では食べたり呑んだりする行為が「人命」に直結するのが印象に残る――食い物のうらみで多くの人が命を落としたり,逆に食い物の恩義を終生忘れなかったり.孔子や墨子も含めて貴賤を問わず食い物に執着し続けてきたのだ.

壮絶な飲食文化であり,壮絶な本である.うかうかと中華料理店に入れなくなった.