● 2013年8月7日(水)真っ白な灰がリューベックのホルステン門を見上げる日

◆早朝はひんやりして,ときどき小雨が降ることもあるが,日中になると日が差して気温は急上昇というのが,この季節のロストックの典型的な空模様らしい.だから,朝の涼しさに惑わされて厚着してしまうとたいへんな目に遭う.ただし,ドイツのみなさんは服装に関しては “分散” がとても大きいようで,通りを見回すと.ノースリーブ姿とサマーコート姿が混在している.服装に関しては「夏だから」という横並び意識はないようだ.

◆でも,今のワタクシにとっては朝イチの講演をいかに乗り切るかが先決だ.一睡もせず朝を迎えたのは数年ぶりのことかもしれない.午前7時,とりあえず朝ごはんをばくばく喰って,シンケンもケーゼもコーヒーも卵もパンも全部食べ尽くして出撃準備をする.

◆本務終了 —— 午前8時半,ロストック大学の会場到着.座長の Ward C. Wheeler さんに挨拶して,スライドの試写をさせてもらう.問題なし.午前9時,開会.9:15からワタクシの講演(20分).トーク原稿なるものをつくらないのはいつものこと.日本語でも他言語でも事前に “書いた” ことはない.今回も持ち時間をフルにつかって「噺」をさせてもらった.講演後,Steve Farris から質問あり.回答になったかどうかわからないけど,よしとしよう.午前10時前,ワタクシの今回の本務はこれにてすべて完了した.

—— ハイデを吹き渡る夏の風が “真っ白な灰” を吹き散らしていく.

◆バルト海の女王に会いに —— ロストック中央駅からバート・クライネン駅までは約50分.さらに乗り換えてリューベック駅まで50分かかる.ハンブルク中央駅よりははるかに小さいが,様式的にはほぼ相似のクラシックな駅舎を出て.リューベックの旧市街地へ向かう.日差しは強いが風は涼しい.街への入り口にそびえ立つホルステン門をくぐる.微妙に歪んだ門を見上げて,ワタクシもちょっいとばかりバロックになる.

街の中心となるマルクト広場はやはり賑わっていた.リューベックはロストックよりも旧市街がコンパクトにまとまっているが,すぐそばにある聖マリエン教会が見上げれば首が痛くなるほど高く高くそびえ立つ.Johann Sebastian Bach がオルガニストだったことで有名なこの教会を含め,リューベックではこの夏パイプオルガンの演奏会が開かれているらしい.教会内を一周り.巨大なパイプオルガンはすばらしいが,ステンドグラスもかなりのもの.

本日のランチは,旧市街のすぐ近くにあるレストラン〈Schiffergesellschaft〉にて魚料理を.旧船員組合の歴史的建造物をそのままレストランとして使っている.薄暗い店内は歴史の重みありまくり.ノルウェー・サーモンのローストとレインボウ・トラウトの揚げ物をいただく.サーモンは切り身で適正サイズだったが,トラウトは巨大な一匹がまるごと大皿に乗って運ばれてきた.付け合せのポテトを押しやって,魚を完食.魚だけでお腹がいっぱいになる.

◆バルト海の風に吹かれて —— リューベックからの帰り,ロストック中央駅にて今度はヴァルネミュンデ行きの列車に乗り換えて,バルト海を見に行く.ときどき通り雨がぱらついた.終着駅ヴァルネミュンデからはバルト海沿いにシーリゾート地が広がる.対岸にわたるフェリーもある.ロストックの中心部から列車でたった半時間しかかからないロケーションだが,バルト海が眼前に広がる風景は別世界.ちょうどバカンスシーズンのいまは,Deutsche Bahn やキャンピングカーで駅前の目抜き通りは避暑客で賑わっている.岸壁には何艘もの船が繋留され,その向こう側はバルト海が水平線まで広がっていた.

午後6時を過ぎて,雨がまた降りだしたので早々に退散.ロストック中央駅からタクシーでクレペリナー通りの〈Nord See〉という店でニシンをおつまみにビールをうぐうぐ.ここのニシンは塩味がちょいと強すぎた.朝から晩までいつでもみんながビールを飲んでいるので,ワタクシも注文しやすい.

◆前夜から一睡もしていないので,そろそろリミットが近づいているようだ.明日はホテルをチェックアウトして帰路の長旅に向かう.北ドイツ最後の夜は睡魔がことのほか親密に降臨してきた.

◆本日の総歩数=23273歩



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