● 2011年7月31日(日): リオプレトの冬は真夏日の暑さになる

◆列車の警笛で目が覚める午前4時.もちろん夜明け前で,窓越しには遠くの夜景しか見えない.空気は可愛て冷たい.南米の市街地の遠景が夜になると一面の黄色に光るのは,ネオンサインのような余計な色のイルミネーションがないからだろうか.いまから三年前,同じ Hennig Society Meeting で,アルゼンチン北部のトゥクマンという地方都市に行ったことがある(→ Hennig XXVII:「Diario de a bordo en San Javier de Tucumán」).そこは大平原パンパの北端だったが,丘の上から眺める夜景が遠くどこまでも黄色に輝いていたことを思い出した.10月末に滞在したのだが,リオプレトよりももっと標高が高かったせいか,とてもクリアな眺めだった.

◆[蒐書日誌]書評公開 —— Carol Kaesuk Yoon『Naming Nature: The Clash between Instinct and Science』(2009年刊行,W. W. Norton, New York, viii+344 pp., ISBN:978-0-393-06197-0 [hbk] / ISBN:978-0-393-33871-3 [pbk] → 書評目次著者サイト).ちょい手間取ったが翻訳権が取れたこともあるので,宣伝方々書評をウェブ公開するとともに関連メーリングリストに送信した.

◆午前6時過ぎの朝食タイム —— 外はまだ真っ暗な午前6時にもうレストランのバイキングが静かに賑わっていた.またしてもフシギな食べ物に遭遇してわくわくした.それはガラスの器に真っ白なものが入っていて,その表面にカマンベールの表面のような「膜」ができていた.フランス産のフロマージュにこういう色合いのがあったなあと思い出しつつ,いったい中はどうなっているのか.朝食バイキングでの配置は,ゼリーやプリンと同じデザートのコーナーに氷で冷やして置かれていた.ブラジルに来てからというもの甘いものはとめどなく甘いことを実体験していたので,このブツはかなり要注意だった.もしも甘かったらアウト.正解は「ヨーグルト」.こわごわテーブルに運んでスプーンですくったところ,酸味の効いた実にまろやかな無糖ヨーグルト.どうやらノンホモ生乳をガラス容器に注ぎそのまま発酵させてヨーグルトにしたらしい.牛乳の品質がいいのかそれとも作り方がいいのか,今まで経験したことのない味わい.上質で美味.

もうひとつ,同じく朝食バイキングのケーキのコーナーに置かれていたロールケーキのひとつ.まわりにはチョコが垂れまくっていたり,ココナッツがパン粉のように降りかけられた激甘系ケーキがずらり.さて,その味やいかに? 正解=「ミルクジャムケーキ」.周囲の激甘ケーキから逃れるようにこのロールケーキに逃避したのが敗因.蜂蜜色のものは日本でいう「ミルクジャム」.練乳をこれでもかと煮詰めたような致死的な甘さであえなく絶命したしだい.ブラジル,おそるべし.

◆Hennig XXX(二日目) —— 午前8時半に階下に降りて会場へ向かう.朝イチのシンポジウムは〈Patterns, Phylogeny and Neotropical Biogeography〉.

  • #HennigXXX Day 2 opens. Symposium on Patterns, Phylogeny and Neotropical Biogeography 8:30 - 11:00 posted at 20:36:04
  • #HennigXXX A. C. Ribeiro: vicariance component analysis of SA based on Diptera and freshwater fishes. posted at 20:51:36
  • #HennigXXX (cont'd.) Post-Gondwanan, tropical, Laurasian elements are probably most abundant in the Neotropical region. posted at 21:02:17
  • #HennigXXX (cont'd) SA geological history combined with its biotic history. Formation of Andes, Great Amazonian Lake, Oligo-MIocene. posted at 21:07:37
  • #HennigXXX (cont'd) 6 major biogeographic patterns. ToDo - construction of the general pattern from individual species cladograms. posted at 21:14:48
  • #HennigXXX Eduardo A. B. Almeida: Gondwanian biogeography: transantarctic connections, expanding Earth, or else? posted at 21:26:12
  • #HennigXXX (cont'd) Nothofagus, Chironomidae, and Lars Brundin on transantarctic relationships. posted at 21:28:29
  • #HennigXXX (cont'd) Leon Croizat on panbiogeography and plate tectonics. posted at 21:31:07
  • #HennigXXX (cont'd) Matille 1990 on the transantarctic track. Colletidae bees. Past transantarctic interchages reconstructed. posted at 21:35:19
  • #HennigXXX (cont'd) Plate tectonics plus additional process hypothesis posted at 21:36:39
  • #HennigXXX (cont'd) Ali and Crause 2011 in J. Biogeography on alternative hypotheses. posted at 21:38:08
  • #HennigXXX (cont'd) McCarthy 2005 J. Biogeogr., 32: 2161-77 on the Expanding Earth hypothesis. posted at 21:41:58
  • #HennigXXX (cont'd) Connection between the Expanding Earth and the Transantarctic relationships posted at 21:43:36
  • #HennigXXX (cont'd) Sanmartin and Ronquist in Syst. Biol. 53(2) 2004 posted at 21:45:21
  • #HennigXXX Juan J. Morrone: Margins of the Neotropics - the Mexican and South American Transition Zones. posted at 22:31:02
  • #HennigXXX (cont'd) Assembling a transition zone - biogeographic network in an area cladogram. posted at 22:37:41
  • Too hot! QT @rmounce: I love the sunny 28C 'winter' weather here in Brazil. Beats English 'summer' anytime! #HennigXXX posted at 22:44:06
  • #HennigXXX (cnt'd) Long chain of discussion continues. Traditional style of the Willi Hennig Society! posted at 23:08:11

—— 朝のシンポジウムはここでおしまい.英語のツイートって書ける内容が少なすぎてまごつく.マテ茶を飲む大会参加者がちらほらいる.マテ茶うまし.

◆続いて一般講演の部に進む:

◆シュハスカリアでのランチ修行(二日目) —— 今日もからっと晴れて予想最高気温30度の真夏日の「冬」だ.ランチタイムは昨日と同じく〈Cupim de Sol〉にて,豚肉の煮込み(フェイジョアーダ)をたくさん食べた.羊肉(carneiro)をつけ合わせて.フェイジョアーダの中身は,黒インゲン豆(フェイジャン)・豚バラ肉・ソーセージ(リングイッサ)までは識別できた.見た目は真っ黒だが,よく煮込まれていて日本人的にはとてもうまかった.豚肉と豆はとても相性がいい.これって,ニューオーリンズのケイジャン料理と近縁なんだっけ? それにしても,みなさんよく食べるなあ.あれだけ肉を盛り上げても消化できてしまうというのはただものではない.

◆午後の不覚寝落ち —— 潜在的時差ボケが抜けていないのか,それともランチ修行で疲れるのか,あるいはからだがシエスタを求めているのか,ホテルの部屋にもどるとうとうとしてしまう.今日も寝落ちしてしまった.まずいなあ.高座の準備がまだだというのに.日本ではもう8月に入っているのか.地球のウラ側からでもメーリングリストの月例アナウンスは送れたぞ.

◆[蒐書日誌]サンパウロの Editora ROCA という出版社はかなり専門的な進化学・系統学の本を出している.たとえばCranston の昆虫学本の訳とか,Futuyma 訳本とか.Editora ROCA のアカウントは @editoraroca.南米生物地理学の新刊論文集:C. J. B. de Carvalho and E. A. B. Almeida (eds.) 『Biogeografia da América do Sul: Padrões e Processos』(2011年刊行,Editora ROCA, São Paulo, ISBN:9788572418966 → 版元ページ)の現物を初めて手にした.

◆[蒐書日誌]スペイン語の生物体系学・生物地理学の教科書 —— G. Scrocchi and E. Dominguez『Introduccion a las escuelas de sistematica y biografia』(1992年刊行,Fundación Miguel Lillo[Opera Lilloana 40], Tucumán, 120 pp. → 版元ページ).三年前,トゥクマンに行ったとき,Hennig XXVII の会場で展示されていたのを手にとったような記憶があるが.

◆夜になってごそごそと仕事を始める.ブラジルにいるのに,まるでつくばに実在するかのような時間帯に活動している.時差ボケがつらいというよりは日本時間で寝起きしているような感じ.サンパウロの太陽光にあまりさらされていないからかも.

◆本日の総歩数=1570歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].



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