● 7月22日(木):早くも「山となって」しまったんですけど……

◇で,一夜が明けて,快晴となる.湿度低し.自分の講演が終わり,バンケットもすませて,Hennig Meeting はすでに「山となって」しまった感がある(個人的に).やっと余裕をもって五感を解放できそうな気がする.

◇あれだけ深夜まで騒いでも,翌朝はきちんと9時から始まる:〈Phylogenetics and biogeography〉.午前中の半日シンポジウム.午後は一般講演.

―― 何年か続けて同じ学会に通っていると,だいたいどういう研究上の“トレンド”があるかが見えてくる.それに対して正負のスタンスのいずれを取るかは別として,そういうものの「存在」が体感できるというのが,こういう国際会議にわざわざ参加するメリットのひとつではないかかと思う.

―― もちろん,それだけではなくて,人によってはポスドクの口を決めるために来たという人もいた.確かに,こういう学会での“人脈”をつてに,“金脈”にたどり着くこともあるだろうし,場合によっては“職脈”が得られるかもしれない.若い世代の研究者にとっては講演以外にもいろいろ「実益」があるということだろう.

―― ランチのおりに John Wenzel 閣下(昨夜のバンケットで Steve がそう言っていた)と同席した.おもむろに,「ノブヒロ,そろそろ日本でも開催してみないかい?」 ほれ,きた! 「即答できないけど,ぼくには重責かも」とかわそうとすると,「ジュンイチがヘルプしてくれるよ」と搦め手が.ほほー,札幌の国際社会性昆虫学会議(IUSSI)のノリでやっちまおうということですか.※ま,そういう声がかかったというだけのことでして.>ジュンイチさん,よろしく(引く).

◇大会会場で得た「本」の情報いくつか ――

  • Daniel Rosa (2001: reprint of 1918), Ologenesi: Nuova teoria dell'evoluzione e della distribuzione geografica dei viventi. Edited by A. La Vergata. Giunti Gruppo Editoriale, Firenze. 446 pp. Euro 40 (paperback). ISBN: 88-09-02334-X
  • B. Wiesemöller, H. Rothe and W. Henke (2003), Phylogenetische Systematik: Eine Einfürung. Springer Verlag, Berlin, 189 pp. Euro 36.95 (hardcover). ISBN: 3-540-43643-X

―― Rosa の hologenesis 本をよくぞ復刻したと思う.

◇これまた会場に置いてあったパンフレットから ―― 〈LINNE〉という体系学ネットワークが今年から動き始めたそうだ.

◇今日は久しぶりに暑い.27度もある!.カンカン照りで日なたはツライ.湿度が低いのでやたらにのどが乾く.オートゥイユ地区のギマール「遺跡」を探して,しばし建築探偵してみる.いかにも高級アパルトマンといった貫禄のある建物だらけ.ギマール邸は Michel-Ange Auteuil駅から徒歩数分の距離だった.三角柱型の建物のいろんなところに特有の曲線が.外壁にも門にも小窓にも.パリの市街地は中心部も外縁部も関係なく,ものすごい数のカフェやレストランがあると思う.営業的によくやっていけてるなというほど.

◇午後6時頃に急に雷鳴が.続いて通り雨.なんだかアジアを思い起こさせる天候の変化だ.気温が少し下がったらお散歩に出かけるかも.

―― と思ったけれど,〈御用〉がギマールの曲線模様のように絡みついてきた.講演申込みをしたものの,講演要旨をうっかり登録しなかったという“未必の故意”による自爆者の対処をよろしくという駒場の殿の御下命がカルチェ・ラタンに電子飛脚で届いた.せっかく自分の講演が終ってのびのーびしていたところを見透かされているようだ.いわく:

「出発前に徹夜でバタバタさせてしまって、発表準備がおろそかになったのではと心配でした。これで、心置きなく、講演要旨集の仕事に専念できますね!」

―― 「むきーっ」と〈のだめ〉化してしまう.そんな〈御用〉は明日の未明にケリつけたろやないか!※帰国したら〈のだめ9〉をすぐに買わないと.

◇寝よう寝よう,もう寝よう.[21:00]

◇本日の総歩数=9968歩[うち「しっかり歩数」=4232歩/38分].


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