● 8月20日(日):聖地から聖地へ,次はニュー・オーリンズ

◇日付変更線を越えた.西に飛んでいるので,いつまでたっても“昼間”のままだ.時間は進んでいるのだが,外は同じ,エスカレーターを逆行するような.

今回の旅の道連れにしたサックスの『オアハカ日誌』にこんな一節がある:

わたしはなぜ日誌を書くのだろう? わからない.頭を整理し,感じたことを文章の形にまとめ,自叙伝や小説のように思い起こしたり創作したりするのではなく,“リアルタイム”でこの作業をすることがいちばんの目的なのかもしれない.(p. 9)

御意.今回の旅路ではぼくとしては初めてロディアのメモをウェストポーチに常時入れておいて,その都度とりだしては書き留めるというやり方をした.学会の会場でも,街中でも,レストランでも.その“リアルタイム”メモをほぼそのままこの日録として文章にしてきた.

◇9時間あまりの飛行の後,午後4時25分に〈JL 061〉便はほぼ定刻通り成田空港に着陸した.こんな夕方なのに外気温は32.2度だ.しかも,この湿度たるや.今回まわってきた地域の中で,掛け値なしのダントツに高温多湿なのは,ほかならないこの「日本」だった.

 真綿が首に巻きつくような蒸し暑さの中,5時20分発のつくばセンター方面シャトルバスが近づいてきた.明日からはまた“平日”がもどってくる.いつものことだが,幸いにして時差ボケはまったくないようだ.

 夜,自宅でスーツケースを開けたとたん,トルティージャの濃い匂いが漂ってきた.メキシコの“記憶”の名残りはまだこの中にあった.

—— 来年の〈Hennig XXVI〉はアメリカ深南部のニュー・オーリンズで開催される.それまでは,アディオス!


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