● 2011年8月1日(月): バンケットのシュハスカリアは大宴会

◆ブラジルにいるのに,まるでつくばに実在するかのような時間帯に活動している.時差ボケがつらいというよりは日本時間で寝起きしているような感じ.サンパウロの太陽光にあまりさらされていないからだろう.ブラジルにいながら日本時間で生活しているので,日本で日の入りを眺めるように日の出を拝んだ.今日の朝焼けはグラデーションがことのほかみごとだった.日が昇ってしまうまでの寸劇のような一瞬の光景.さて,ブラジルも8月になってしまったか.

◆日本のクレジットカードは南米では万能ではない —— 中南米を旅行したときに何度か経験があるので書き留めておく.たとえばVISAのような国際的に通用するクレジットカードであっても,中南米の国々では使えなかったことがある.トランジットした中継の国では使えてもダメということ.三年前に訪れたアルゼンチン北部トゥクマンのホテルでも最後の会計のときに,いつも使えっているVISAカードが拒否されて,あわてて他のカードを探しまわった.幸い最後の一枚が大丈夫だったのでよかったが,すべて拒否されたらいったいどうなっていたのだろう.対策としては「複数枚のカードを持ち歩く」か「現金で払える用意をしておく」くらいしか思いつかない.大口出費の最たるものはホテル宿泊なので,その代金分を現金で持ち歩くことはいざというときの保険として必要かもしれない.

◆朝食バイキングのスペースの半分はスイーツが占めている.甘いデニッシュとか必殺激甘ロールケーキそしてゼリー,プリン,フルーツなどなど.ワタクシは朝から甘味党ではないので横目に見つつ通り過ぎているだけだ.しかし,見ているとコーヒーとケーキとフルーツだけという客も少なくない.珈琲の淹れ方がエスプレッソのように濃いので,スイーツもそれに合うように濃厚な味になったのかもしれない.帰国する前に一度はこういう甘いのを早朝から体験しておくのもいいかもしれないが.さて,この二種類のうちより甘いのはどちらだろう? 手前のは鎧のようなシュガーコーティングにココナッツがトッピング,奥のはチョコレートが深奥まで染み渡っているようだった.まだ口にしていないワタクシにはもちろん正答はわからない.

◆Hennig XXX(三日目) —— 今日もまた参加者たちのざわめきが高まる午前8時半前を見計らって階下に降りる.

◆休憩時間のコーヒータイム.Ross Mounce のプレゼンは,一枚の「巨大スライド」の部分部分をひとつひとつ拡大するというスタイルでいま発表中.全体像がつかめて効果的なやり方.いったい,どんなプレゼンツールを使っているのだろうかと訊いたら,〈Prezi〉ではないかとのこと.今夜のバンケットはサンジョゼ・ド・リオプレト屈指のシュハスカリア〈Brasa Viva〉に大型バスを連ねて乗り込むらしい.ランチもシュハスカリアじゃなかったっけ.徹底的に牛肉充〜.十年前にサンパウロに呼んでくれた Mario de Pinna に久しぶりに会った.あの時のバンケットもサンパウロ市内屈指のシュハスカリアで,あまりの牛肉充に翌日は死にそうだった.ブラジルに来たらこれが宿命なのかも.

  • #HennigXXX Ward C. Wheeler: Analysis of Unaligned Sequences : Uto-Aztecan Languages. Lingustic phylogeny using POY-dynamic optimization. posted at 22:24:23
  • #HennigXXX (cont'd) Many character-states (a), shorter length(n), and fewer sequences(m) - characteristic of language samples. 0(a^2*n^2*m) posted at 22:36:17
  • #HennigXXX (cont'd) Uto-Aztecan Languages in Mexico and USA - 38 languages. Swadish 1955 list of words as characters. posted at 22:40:17
  • #HennigXXX (cont'd) Atested -> IPA -> LaTeX -> FASTA posted at 22:41:29
  • #HennigXXX (cont'd) FASTA-coded Uto-Aztecan words are analysed using POY with direct optimization for unaligned alphabetical sequences. posted at 22:46:33
  • #HennigXXX Mario de Pinna: ACCTRAN vs. DELTRAN in homolgy assessment in phylogenetics. posted at 23:01:45
  • #HennigXXX (cont'd) Minaka's paper (1993) on MPR-posets published in Forma and J. Chiba Pref. Museum and Inst. is referred. Muito obrigado! posted at 23:12:08
  • #HennigXXX (cont'd) J. Dom Froger 1968. La critique des textes et son automatization. Dunod Paris. posted at 23:13:37
  • @rmounce Sorry for no link to pdf of my 1993 paper. Abstract here: http://ow.ly/5Syts #HennigXXX posted at 06:34:52

—— 文字テクストのコード化に関する Ward Wheeler の方法「IPA → LaTeX → FASTA」というのは汎用性あり.ACCTRAN / DELTRAN についてはやっぱり反論を書いておかないとダメかな.あとで Mario に相談してみよう.

◆今日もよく晴れて夏日になった.正午前に三連荘で〈Cupim de Sol〉へ向かう.車が左右からすっ飛んでくるので,道路を渡るのが一苦労だ.日本を出るときに事務から「治安には気をつけて」と言われたが,むしろ自動車に気をつけないと.本日のランチはクピン(牛)+プレニーウ(豚)+フランゴ(鶏)の三点セットで「軽く」すませた.奥に隠れているフェイジョアーダは,まあなんというか,デザートみたいなもんですな.食に関してはもう自暴自棄な感じがしてきたな.日本人的にはシュハスコは「肉だらけ」のように見えるが,周囲を見渡すかぎり,ブラジルの人たちの肉の盛り方はもっとすごい.肉をさばいてくれるお兄さんも「もっと食べなよ」と焼きたて串刺しの肉をいろいろ出してくれるのだが,言いなりになっているとバベルの塔ならぬ肉の塔がそびえ立つ.ホテルに戻ってからシエスタ.その後は明日の高座のしたくをする.

◆Hennig Society の伝説はバンケットで口伝え —— 午後7時前,ホテル前に参加者一同が集結した.大型バス二台に分乗して,ホテルのある丘の上から下ってリオプレトの川を初めて見たあと,再び坂道を上がってシュハスカリア〈Brasa Viva〉に到着する.日本もブラジルも焼肉店というのは大きいのだろうか.広大なフロアの一画を占拠したのは百数十名くらいか.シュハスカリアではアルコールを飲んでいる客はあまりいない(せいぜいビールどまり)むしろ,徹底的に肉を喰うというシンプルにして過酷な目標が設定される.頭上を高々と焼きたての肉塊が交差し,隙あらば巨大な金串がテーブルに突き刺さる.すかさず「não」と言わないと,皿に肉が盛り上がる.春の祭典ならぬ肉の祭典.

一時間ほど肉が飛び交った後,例年通り Steve Farris が今大会での Student Prize と Willi Hennig Prize の発表をした.この学会は学生に対する援助をしっかりしていて,バンケットは無料,Best Student Award には US$ 400,Willi Hennig Award には US$1,000 が出る.今回の Hennig Award はアルゼンチンから来た Salvador Aries さんが受賞.タトゥーが入って顔中メタルリングがぶら下がる風体は日本では想像できないが(パンツ見えてるぞ),Hennig Society では「あり」だ.参加者全体の割合から言っても学生やポスドクの参加者はとても多く,平均年齢は低い(というか二極分化している)と思われる.Award の発表のあとは,これまた恒例のバンケット・トーク.今年は John Wenzel がマイクを握った.いかにエンターテイナーとして参加者を笑わせるかが腕の見せどころ.Hennig Society の伝説はバンケットを通じて口承伝承されていく.

この店の一角には「寿司コーナー」があって,和風のちょうちんの壁紙の前で寿司職人の服を来たブラジル人の青年が一生懸命にぎり寿司を握っていた.あまりに熱心なので「『努力』の鉢巻が上下逆だよ」とはとうてい言えなかった…….寿司ネタは悪くないのだが,寿司飯がイマイチだったのは残念.でも,このブラジル青年の熱意に免じて許してしまおう.ちなみに,寿司コーナーはたいへんな人気で,肉の祭典から逃れたい客にとって格好の refugia となっているようだった.アルゼンチンから来たポスドクが言うには,こちらでは米(arroz)が高いので,日本食はふだんなかなか食べられないそうだ.

—— 午後10時過ぎ,ホテルへの送迎バスが来たのでぞろぞろ乗り込む.午後11時前にホテル着.実に健康的にアルコール抜きなバンケットだった.しかし,água mineral com gas と肉充でもうお腹いっぱい.

  • #HennigXXX Today's banquet is at churrascaria Brasa Viva. Who is the banquet speaker? What is the destiny of my talk tomorrow morning??? posted at 06:43:15
  • #HennigXXX Our banquet was over. John Wenzel's banquet speech was very entertaining. @rmounce got the presentation award - conglaturations! posted at 10:44:04
  • #HennigXXX Legends of the Willi Hennig Society are orally inherited through banquet speeches in annual meetings. posted at 14:21:41

◆深夜のドロナワははてしなく続く —— いつもならバンケットから帰還すればそのまま沈没なのだが,今年はそうはいかない.12時間後の高座の準備がぜんぜんできていないからだ.第一,スライドが揃っていないというのはかつてない緊迫度の高さかもしれない.シャワーしてから,パソコンに向かう.午前3時過ぎ,窓から外を見おろすと地面が濡れているようだ.いまはもう星空が広がっているので,いつのまにか通り雨でもあったのだろう.気温があまり下がらないのはそのせいか.ごそごそドロナワ仕事はまだ続いている.そのまま朝を迎えたのだった.

◆本日の総歩数=1199歩[うち「しっかり歩数」0歩/0分].



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