● 4月10日(日):さあ,帰るぞ〜 / アトランタへ

◇午前6時前に起床.毎日何かとすり減ったので,安眠熟睡しまくり.

今日は帰国への旅路の始まりなので,トランクに荷物を最密パッキングしないといけない.しかし,フライトが正午前なので,時間的には余裕があるように見える.ただし,メキシコシティ市内の道路事情を考えると,早めにチェックアウトして空港に向かった方が安全安心だろう.

◇IOSEB Council Meeting そのものは終わったが,“宿題”がいろいろ課されているので,めでたく解放されたわけではない.ICSEB-VII の全体テーマから考えて,前回のパトラス大会と同様に生物多様性に関係する分野の研究者にアナウンスするのはもちろんだが,過去1世紀半の体系学・進化学の成果を見直そうという意図もこめられているので,射程はもう少し広くなる.前々回のブダペスト大会ほどの生態学シフトはないと思われるが,保全がらみの生態学・生物地理学のセッションが増えるのではないか.もうひとつ,ラテンアメリカの生物相に関わる研究発表が割合として多くなるだろう.

◇さてと,朝食の時間が近づいてきた.次はアトランタからかな.[6:44]

◇朝食では Dan Brooks さんとオスロから来ていた Liv Borgen さんと同席.Borgen さんは植物学者だが,数年前に京都であった「biosystematics の学会」に呼ばれて講演したことがあると言っていた.ひょっとして〈種生物学会〉が招聘したのでは?(>関係者諸氏)

辛めの臓物スープがうまかった.これにもライムを絞るわけね.ここ Radisson Hotel は長期滞在型マンションといった雰囲気で,眺めもよく快適な2日間を過ごせた.なんせ初めてのメキシコなので他と比較できないのだが,1泊 US$ 110 というのは相当高い部類に入るホテルではないだろうか.

◇9時前にチェックアウトし,タクシーでベニート・ファレス国際空港に向かう.平日はめちゃ混みな道路だが,今日は日曜なのでそういうことはない.紫色の花が咲いている街路樹はなんという木なのか.昨夜,パーティにいく車中から UNAM のモダンな建築がちらっと見えたのだが,いまタクシーに乗っていても,それがいったいどこにあったものやらかいもく見当がつかない.メキシコシティは広過ぎる.

“Aeropuetro”に到着する直前に「Oaxaca」という道路標識が目に入った.今回は来てすぐ帰るという強行軍だったが,次回(3年後)に来るときはもっと余裕があってほしいと思う.IOSEB会議参加者のうち,フライトまで余裕のある人たちは,今日はなんちゃら遺跡のピラミッドを観光に行くと言っていた.うらやましい.

◇そうそう,レストランで会計をするときにレシートへの署名を求められたのだが,“signiture”と“nombre”というふたつの欄があってまごついたことがあった.“nombre”を“number”に直結させたワタシはばか(“number”は“número”だった).前者は通常の“サイン”でいいのだが,後者は“活字体(block letter)”で記入するのだと Brooks さんに教わった.※後に空港の書店で,ウンベルト・エーコの小説『薔薇の名前』のスペイン語版を見つけた.タイトルは『El nombre de la rosa』.なるほどね.

◇どこもかしこも「マリアッチ」―― タクシーの中もそう,空港ロビーもそう,免税店の中もそう.空港でなまじ時間があると本屋に寄ってしまってよくない.チェックインをすませ,身軽になったのを幸い,空港内を徘徊する.やっぱりみなさんテキーラを買ってますねえ.

アトランタ行きの AeroMexico 便[AM660 / DL8012]はすごく混んでいた.3時間ほどのフライトで,John Dunning『The Sign of the Book』(2005年刊行,Scribner,ISBN:0-7432-5505-4)を 1/3 ほど読む.今回は,シリーズ主人公のクリフ・ジェーンウェイだけではなく,前作からの新しいパートナーであるエリン・ダンジェロが活躍する.“署名本”をめぐる推理がこれから始まるというところで,時差1時間のアトランタ Hertsfield-Jackson 国際空港に着陸.[15:55]

◇メキシコも暑かったが,アトランタも負けずに暑い.行き交う人々はみなさん半袖だったりサンダルだったり.米国きっての巨大空港ということで,コンコースを結ぶ地下鉄が利用者の交通手段になっている.Baggage Claim でトランクをピックアップしようと思ったら …… 出てこない. 小一時間待ってもぜんぜん出てこない.やや,あせる.共同運行会社であるデルタ航空の係員に事情を話して,トランクの行方を追跡してもらったところ,しばらくして「あなたはとてもハッピー.重いトランクはすでに明朝出発のトランジット便に積み込まれています.ナリタには確実に届けられるよ」.ちょっと待ったれやあっ.ということは,ワタクシは“丸腰”でジョージア州に放り出されるわけねー.「そうそう.」

思い起こせば,メキシコでチェックインするときに,乗り継ぎ便の搭乗券までよこした窓口担当者が,「アトランタでは面倒なことはありませんから」と言っていたよーな.ぼくはてっきりアトランタでのトランジットではチェックインが不要なのかと早合点したのだが,そうではなくトランクをピックアップする必要はない(=させてくれない)ということだった.

しかし,こうなったからにはじたばたしてもしかたがないので,リュックひとつに免税品袋をぶらさげて,空港内地下鉄に乗り,ground transportation のある終点まで乗る.予約しておいた Wellesley Inn Atlanta Airport の送迎シャトルバスは空港を出てすぐのロータリーCから発着する(なかなか機能的な運搬システムだと思う).着いたところは典型的なモーテルで,とても気楽だ.

◇うっかりパソコンをトランクに詰めてしまったので,予期せず時間を持て余す.まだ外は明るいが,時間的には夕食に出てもいいだろう.ホテルからは隣接するレストラン〈Hertsfields Grill and Bar〉に廊下がつながっている.行ってみると,半分はカウンター・バー形式,残る半分がテーブルのある通常のレストラン形式の店だった.テーブルに座り,メニューを見せてもらう.まずは飲み物か.何とかラガーというのを頼もうとしたら,注文を取りにきたお姉さんが「それはオーストラリアの銘柄だけど,輸入ビールがいい?」「じゃ,どれがお奨め?」「もちろん〈South Georgia Sweet〉よ!」ということで,黒っぽい生ビールが運ばれてきた.なかなかいい味ですなあ.

では,まずはサラダからね.Cobb Salad($7.45)というのをお兄さんに頼んだら,きわめて挑戦的な量の野菜サラダがやってきた(こんなん一人で喰えるんかい?).でもまあこれくらいだったら,なんとかなるでしょ.喰い尽くして,ビールを追加して,そのあと Grouper Filet($14.95)という魚のグリルを注文する.しばらくして極度にでかい切り身がライスと茹で野菜の上に乗っかって出てきた(ううむ).でも,荷物がなくて身軽だし,まあ食べてもいいかともくもくと摂取にいそしむ.いい焼き加減でなかなかうまい.ジョージア州はシーフードで決まりか.

バーの方では,ゴルフの試合がテレビ放映されていて,ショットごとに客が騒いでいる.オーガスタ(かどこか)で大きなトーナメントでもやっているのだろうか.会計をすませて午後8時.まだ外は明るい.

◇今日はまったくデューティがなく,パソコンもなく,本だけあるというハッピーな境遇なので,あれやこれや“つまみ読み”しているうちに寝てしまったようだ.

◇本日の総歩数=4619歩[うち「しっかり歩数」=0歩/0分].


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